Blog「病院に行くか悩んだ話」
2025.02.07
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その日はお昼前に草野球があって、車で向かい
見事にノーヒットでうなだれながら帰宅した時のことだった
駐車場で荷物から鍵を出そうとしたら見つからず
どうせどこかに紛れ込んでいるんだろう、と野球用リュックの大小様々なポケットを探し
普段は使わないところまで探し
更には車の座席の下や、ドリンクホルダーの底を舐めるほど見回し
無事、鍵を落としてきたことが確定した
財布はあるし、スマホもあるし、着替えもグローブもガムもスパイクも帽子もユニフォームも
ぜーんぶあるのに、鍵だけがない。
それを何周もして、とうとう忘れ物をしたことを受け入れた
今までグラウンドに何かを忘れてきた経験などなかったからこそ
どうせどこかに紛れているんだろう、と楽観視していた、本当になかった
楽観視からの落差ったらなくて、今帰ってきた道をまた戻るのかと思うとだいぶしんどかった
向かう途中も、諦めきれずに助手席にリュックを置いて
信号で止まるたびに何度も探したけれど、
やっぱり財布はあるし、スマホもあるし、
着替えもグローブもガムもスパイクも帽子もユニフォームも
ぜーんぶあるのに、鍵だけがなかった。(デジャブ)
結果的には心当たりのある場所にちゃんと落ちていて
往復お疲れ様でしたね、と鍵にねぎらわれ、なぐさめられた気がした。
そこからまた同じ時間をかけて家に帰り、洗濯物を出し、シャワーを浴び
部屋でほっと一息つき
用事を思い出して、また車を出すことにした
さてさて、財布…財布…
ん?
今度は財布がなかった
帰ってきて、財布を出したかどうかなど覚えていないが
とりあえずリュックの中にはなかった
あるとしたら部屋か、浴室か、リビングくらいのもんだ
見渡すが、どこにもない。
それは流石におかしいだろう、と自分で自分に問いかける
確かにあったはずだ。
鍵がなくても財布があったからこそまだ心の拠り所にできていたのに
一体どこにいっちまったんだい財布さん
ほんの30分かそこらの間で、過去の自分に財布を隠されるというイジメにあったわけだが
部屋の隅々、浴室、洗濯機の上、リビング、キッチン
行った記憶はないがトイレ、鍵と一緒に出したかも、と思って玄関
車にあるんじゃないか、と鍵を探した時のように後部座席、それぞれの座席下
何かの反動でスポッと入ったんじゃないかとスライドドアのポケットも探し
メガネを頭に乗せながらメガネを探す現象も考え、一度スッポンポンになってみたり
一緒に洗濯しちゃったんじゃ、と洗濯機の中や、冷やしちゃったんじゃ、と冷蔵庫の中も見た
30分前の自分と同じ動きを再現してみたりもした
どこにもない。本当にない。
いや、鍵を探す時に何度も見たじゃん。ないはずないじゃん…
すでに極限状態
ここまで来ると、もはや財布がないことよりも
自分の頭に何かが起きているんじゃないか
という心配と不安が勝ち始めてしまった
さっきまでの自分の行動を忘れたり、認識を誤ったり
これは何か大きな病や障害の予兆ではないのか。と
僕は部屋で動けなくなった。
あったものがなくなる。
こんな経験今まで一度もなかったし、動けば動くほど新たに何かがなくなる気がした。
脳外科か、神経内科か、はたまた心療内科か
病院通いになることも覚悟しなきゃいけないな、と思うくらいには追い詰められていた
まあ、現状はどうしようもないし、あんまり思い詰めてこれ以上へとへとになってもなあ、と
僕はシンガーソングライター、とりあえず一回音楽に頼ることにした。
井上陽水さんも、言ってた。
探すのをやめた時、見つかることもよくある話で、踊りましょう。夢の中へ
行ってみたいと思いませんか、ふふっふー
そうだ、一旦探すのをやめよう。そして踊ろう。そして寝よう。
探すのやーめた!
僕は世界に宣言して、一回だけ車を見に行って、なければ踊って寝ることにした
鍵がないないと騒いでいたのがお昼過ぎだったのに
あたりはもう陽も傾き始めて、夕暮れ間近という感じだった。
何かを探すだけで1日が終わった気がした
車の鍵を開け、座席周辺を調べる。下、横、助手席、後部座席。やっぱりないか
病院の予約取らないといけないな、とりあえず寝よう。
諦めて、鍵を閉めようとした時だった。
助手席のクッション、ちょっと浮いてない?
僕はクッションを持ち上げた。
もう、ずっとどこ探してたんだよ!
財布が僕を睨みつけてきた
黒いクッションに黒い財布。同化して見落としていたみたいだ。
僕はうなだれた
鍵を探しに行く途中で、諦めきれずに助手席で荷物を漁ったばかりに
クッションの下に滑り落ちたらしい
見つけた安堵感と疲労感で、僕はまた動けなくなった
病院には行かなくても良さそうだけど
鍵と財布にエアタグを付けるか真剣に悩むことになった1日でございました