2017.12.22
Hi-STANDARD LIVE REPORT [THE GIFT TOUR 12.14 さいたまスーパーアリーナ]
- REPORT

Hi-STANDARD(以下ハイスタ)のニュー・アルバム『THE GIFT』ツアー・ファイナルが遂にやって来た。全13カ所に及ぶ対バン・ツアー最後の相手は、百戦錬磨のマキシマム ザ ホルモン(以下ホルモン)だ。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)、上ちゃん(4弦)、ナヲ(ドラムと女声と姉)の4人がステージに現れると、さいたまスーパーアリーナはザワザワと沸き立つ。冒頭曲「握れっっっっっっっっ!!」が始まるや、シャープに研ぎ澄まされたヘヴィネスっぷりで観客を瞬間沸騰させる剛腕ぶりを発揮する。いきなり本気モード全開だ。なんでも今ツアーで最初に声をかけられたのがホルモンという話を自ら伝え、メンバー自身も喜びの余りに凄まじいテンションの高ぶりようだ。ナヲの妊活を経て、今年5月20日・八王子MATCH VOX(対バンはKen Yokoyama)にてライヴ活動を再開させたホルモンだが、以前よりも破壊力、爆発力、戦闘力を増幅させているから、末恐ろしい。「What's up,people?!」、「F」と怒濤の攻勢により、緊張感漲るドラマ性とヘドバンの嵐を吹かせる尋常ならざるエネルギーを同時に噴射。それからハイスタの3rdアルバム『ANGRY FIST』(97年発表)ツアー時にハイスタ・恒岡章と一緒にダイスケはん(20歳)、ナヲ(22歳)が収まった写真をスクリーンに公開。当時、純粋無垢ないちファンだった事実を明らかにした後、ここで飛び出したのはなんと「ロック番狂わせ」である。「井の底に引きずり落とすような 井の中の蛙であれ」という名フレーズを織り込んだ初期曲で、白帯バンドが黒帯バンドをぶっ倒す!という、ある意味ホルモンにとって永遠のテーマとさえ言える必殺ナンバー。えっ、バンドは既にビッグじゃないかと思う人もいるかもしれない。当たり前のことだが、彼らだって最初から地位や名声を得ていたわけじゃない。ハイスタ好きのキッズからバンドを立ち上げ、自分たちなりの武器を磨きに磨き抜いて、憧れだったハイスタとの対バンという座を勝ち取ったのだ。ホルモンは自分たちがどれだけビッグになろうと、鋭利な牙を失わない番狂わせマインドを今なお磨き続けている。今日聴いたこの曲は、とんでもなくエモーショナルに胸の奥深くに突き刺さった。全存在を投げ打つ「ロック番狂わせ」の迫力には心が震えた。

そして、灼熱風呂の様相を呈した下北沢SHELTER公演から3日後、さいたまスーパーアリーナの舞台に難波章浩(Vo/B)、横山健(G/Cho)、恒岡章(Dr/Cho)の3人が登場。開口一番「来ちゃったねぇ、遂に・・・」という難波の言葉は、無事にファイナルを迎えられた喜びと一抹の寂しさを漂わせていた。さあ、1曲目は何で来るのかとソワソワしていたが、この日は「The Gift」でスタートした。完全に意表を突かれた。既に泣きそうな自分がいた。「誰かになろうとなんてするな 誰でもないお前自身になるんだ(中略)お前だけに贈られたギフトを見つけるはずさ」(訳詞)と優しくも力強く語りかける歌メロに背中をグッと押される。これは「ロック番狂わせ」の名フレーズとも通じるものがある。一人ひとりがオリジナルで、他の誰でもないんだから、胸を張って生きろ!というメーセージが刺さる。それからシンプルなリフが猛烈にかっこいい「Growing Up」に入ると、体中が一気に熱くなり、前のめりになって曲の世界に没入した後、「All Generations」へ。今日もちびっ子から年配の方まで幅広い層の観客が詰めかけていた。それこそ下北沢SHELTERにもちびっ子が親に連れられて足を運んでいたし、きっと今ツアーの各地で似たような光景が見られたことだろう。


ハイスタは90年代はもちろん、11年復活以降、加えて、活動休止していた00年代にもファンが増えていたと難波が嬉しそうに語ってくれたことがあった。キッズたちが親になり、自分の子供や周りの仲間にハイスタを薦める。あるいは、ライヴハウスに行くと、転換タイムにDJがハイスタの曲を流し、大盛り上がりする場面にも何度か遭遇した。積もった時間さえも、すべて今に繋がっているのだ。"全世代"と付けられた曲を聴きながら、そんな様々な思いが駆け巡った。きっとここに集まった人もそうだろう。青春のサウンドトラックとして、人生を伴走してくれる今を生きる音楽として、はたまた、今年出会った人生初のパンク・ロックがハイスタだった、という人もいるに違いない。今日の客層を眺めながら、改めて音楽は人と人を繋ぐという奇跡を目の当たりにした。次の「Summer Of Love」に突入すると、アリーナとスタンドが一体となり、観客が無邪気に飛び跳ねている。壮観だ。



その後も「Dear My Friend」、「Hello My Junior」など新旧の楽曲を巧みに繋ぎ合わせ、強力なシンガロングを会場に作り出していく。また、タイトに引き締まった「Going Crazy」の演奏に観客もノリノリで騒ぎまくっていた。
この日も難波と横山のクダけたMCのやり取りや、時に恒岡が暴走するシーンもあったりと、ハイスタらしい和やかな空気も振り撒く。その一方で、「最近のバンドはMCがうまい。曲で泣かせろよ」と横山がサラっと言い放つ言葉にドキッとした。確かに90年代はMCどうこう、テクニックうんぬんより、楽曲でブチ上がれるかどうかがすべて、みたいなバンドが多かったのも事実。横山は音楽をおろそかにせず、楽曲そのものの力で勝負しろ、と言いたかったのだろう。

後半は「California Dreamin'」を皮切りに、「Fighting Fists,Angry Soul」、「Starry Night」、横山がリード・ヴォーカルを務めたミニー・リパートンのカヴァー「Lovin' You」、「The Sound Of Secret Minds」、「Stop The Time」、「Stay Gold」、「Maximum Overdrive」と珠玉の煌めきに満ちた90年代ナンバーを一気呵成に畳み掛ける。この流れにも大勢の観客が狂喜乱舞していた。


本編を「Brand New Sunset」で締め括ると、アンコールで再びメンバー3人が現れた。難波は今日ハイスタのレーベル「PIZZA OF DEATH」のTシャツを着てライヴに臨み(「もんげー!」と横山は驚いていた)、改めてメンバーやスタッフに感謝を意を述べ、「ANOTHER STARTING LINE」を一発目に繰り出す場面にも胸が熱くなった。それから12月にぴったりのジョン・レノン&オノ・ヨーコのカヴァー「Happy Xmas(War Is Over)」、客電が煌々と付く中で「Mosh Under The Rainbow」を披露する。アリーナにある計7つのブロックすべてに肩を組み輪になって踊る人たちが続出する歓喜の光景を現出させ、感動の終焉で幕を閉じると思いきや・・・観客が半数以上減った中でまさかの「My Heart Feels So Free」、「Turning Back」のゲリラ2連打。ラストのラストまでやんちゃなキッズ魂を見せつけ、こちらを欺くサプライズ的ギフトを用意してくるのだから、たまらない。



今日のライヴ中に「こうなったら誰かがくたばるまで、ハイスタを畳まねえ!」と横山は宣言した。今ツアーをやり遂げて、バンドが史上最強のチームとして固まった、という実感を抱いたのかもしれない。さいたまスーパーアリーナ公演は"終わり"ではなかった。本当の意味で"始まり"を告げたとも言える。これからもハイスタには期待せずにいられないし、またすぐにライヴを観たいという衝動に駆られている。いつでも準備して待ってます! そう言える日が来たことが、なによりも幸せだ。


01.The Gift
02.Growing Up
03.All Generations
04.Summer Of Love
05.I Know You Love Me
06.Dear My Friend
07.Hello My Junior
08.Glory
09.Close To Me
10.Pink Panther Theme
11.Nothing
12.Going Crazy
13.We’re All Grown Up
14.Pacific Sun
15.California Dreamin'
16.Fighting Fists,Angry Soul
17.Starry Night
18.The Sound Of Secret Minds
19.Stop The Time
20.Stay Gold
21.Free
22.Maximum Overdrive
23.Brand New Sunset
[ encore ]
24.Another Starting Line
25.Teenagers Are All Assholes
26.Happy Xmas (War Is Over)
27.Can't Help Falling In Love
28.Mosh Under The Rainbow
[ encore ]
29.My Heart Feels So Free
30.Turning Back