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2017.12.20

Hi-STANDARD LIVE REPORT [THE GIFT TOUR 12.11 SHELTER]

  • REPORT

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TEXT : 山口智男 PHOTO : Teppei Kishida

 「THE GIFT TOUR 2017」のツアー・ファイナルとなる、さいまたスーパーアリーナ公演を、3日後に控えたHi-STADARD(以下ハイスタ)が、さいたまスーパーアリーナのおおよそ100分の1のキャパの下北沢SHELTERでライヴをやる! いや、感嘆符1個じゃ全然足りないから、もう一度書き直そう。ハイスタが下北沢SHELTERでライヴをやる!!!! これを大事件と言わずに何を大事件と言おう?! 
「伝説の下北沢SHELTER。始めるぞ!」
 トップバッターとしてステージに立った対バンのHOTSQUALLのアカマトシノリ(B, Vo)が開口一番、言った通り、この日2017年12月11日のライヴが伝説として語り継がれることは、まず間違いない。もちろん、それはライヴの出来しだいとは言え、前述したとおり、ハイスタは18年ぶりにリリースした4作目のアルバム『THE GIFT』をひっさげ、10月26日の渋谷TSUTAYA O-EAST公演を皮切りに全国各地のアリーナとライヴハウスを回っている真っ最中だ。下北沢SHELTER公演は、その12公演目。これまで全国各地の熱いファンと対峙しながら一回一回渾身のライヴを重ね、バンドも調子をどんどん上げてきているに違いない。

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 しかも、対バンはハイスタからの影響を、自分らの誇りとして語り、同じスリーピースで活動しているHOTSQUALLとDRADNATSの2組。当然、ファンの期待は否が応でも膨らむだろうし、ステージで演奏するバンドに負けない気合で3組の熱演に応えることだろう。そう思いながら、もみくちゃにされることを覚悟の上、足を運んだところ、果たしてトップバッターのHOTSQUALLから伝説として語り継がれるにふさわしい熱演を目の当たりにすることに。
 1曲目の「YURIAH」でいきなりモッシュを誘ったHOTSQUALLは「俺達がキッズだった頃のほうがやばかったんじゃない?」「来いよ!来いよ!」「ハイスタが好きなら俺達も好きだろ!」としきりに客席を煽りながら、ハーモニーワークも見事なベスト選曲と言える全10曲を披露した。
「この日を18歳の頃から楽しみにしていました」というアカマの言葉からは、ハイスタに対するストレートなリスペクトが感じられたが、中盤、ハイスタと同じステージに立てる歓びに感極まってしまったのか、アカマが涙を必死に堪えていると、客席から「泣け!泣け!」と声が飛び、それに対する「今日の涙は拭かない」という負け惜しみのような一言が客席を沸かせた。そして、テンポを落として、「The Voice」、18歳の頃に作ったという「Lion – Standing The Wind」をじっくり聴かせると、「ROCK SOLDIERS NEVER DIE」で再びテンポアップ。客席からいくつもの拳が高々と上がる。
 その光景を見ながら、「終わりたくねえな。でも、終わらなきゃ、次につなげられない」とアカマが名残惜しそうに言うと、「これが始まりだよ」とチフネシンゴ(G, Vo)が答える。
「この夢を次につなげようぜ!」
 チフネの一言に促され、ラスト・ナンバーの「Laugh at life」になだれ込む前にアカマが言ったその言葉が胸に響いた。夢を次につなげようぜ。いい言葉じゃないか。そこにはただ憧れだけでやってきたわけではないバンドの矜持と、ある意味、使命感が感じられた。

 一方、「この言葉を言う日が来るとは思ってませんでした。ハイスタ、呼んでくれてありがとう」というYAMAKEN(B, Cho)の気の利いた言葉から始まったDRADNATSはストレートにリスペクトを表現したHOTSQUALLとは違うやり方でリスペクトを表現した。
「ステージに立って、やっと(ハイスタと対バンする)実感が湧いてきた」というKIKUO(Vo, G)に対して、YAMAKENは「今も実感が湧かない」と言って、この日、ハイスタのリハーサルを見ながら、最高のツマミだと思ってビールを飲んでいたことを白状。さらには「いつかは(自分達のライヴに)ハイスタを呼びたい。一回呼ばれたんだから呼べるよ」と軽口を叩いて、観客を喜ばせたが、DRADNATSというHi-STANDARDのSTANDARDを逆にしたバンド名の由来を知っている人なら、それが彼なりのリスペクトの表し方だとわかっていたはず。そんなあまのじゃくなところがいかにもパンクって感じでよかった。 「俺達の後には、もうハイスタしかいません。思いっきり楽しんでいってください。俺達も負けないくらい楽しみます」というKIKUOの言葉通り、DRADNATSも「In My Heart」から「Spread Both Arms」まで、新旧の代表曲をたたみかけるように演奏して、観客を大暴れさせた。中盤では、YAMAKENと笹森健太郎(Dr)がそれぞれ最初に組んだバンドがハイスタのコピー・バンドだったことから、ハイスタの「Spread Your Sail」をカヴァー。「ちゃんとカヴァーしたいから」といつもはKIKUOの歌にハーモニーを重ねているYAMAKENがリード・ヴォーカルを務めたところに軽口を叩きながら、実はバカ正直なリスペクトが感じられたが、最後、「ハイスタが続けるかぎり、いつか倒したいと思います」とYAMAKENはハイスタ打倒を宣言。「スリーピースのメロディック・パンクはハイスタだけじゃなくて、DRADNATSがいるということを覚えておいてください」と向こう意気を剥き出しにしながらバンドの矜持を、最後の最後に印象づけたのだった。

 この日、ステージを下りるとき、「ライブハウスらしい組み合わせだった」と横山健(G, Vo)は満足そうに言ったが、伝説として語り継がれるにふさわしいドラマを作ったHOTSQUALLとDRADNATSの熱演の後でハイスタは一体、どんなライヴを見せてくれるのか、ぎゅうぎゅう詰めになった観客が1秒で早く暴れ出したい興奮を抑えながら、ハイスタの登場を待ちわびる中、8時50分、ついにハイスタが登場。「ウォー!!」という歓声が上がった。

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「帰ってきたぜ、下北(沢)。踊ろうぜ、下北!」
 難波章浩(Vo, B)が観客に声をかけ、ライヴは『THE GIFT』からのサーフ調のインスト・ナンバー「Pacific Sun」で始まった。とたんに、ぎゅうぎゅう詰めのフロアがうねるように動き出す。人の波が前から押し寄せ、後ろに倒れる?!と思うと、今度は背後から人の波が押し寄せ、前に弾かれる。ステージ前のエリアはすでに、もはやモッシュなのか、クラウドサーフィンなのか、何なのかわからない大混乱状態。バンドはそんなフロアに「Growing Up」、「18歳以上の奴もいるんじゃない?(年齢は関係ない)全員で来い」と難波が言った「All Generations」、「今回のツアーで初めてやる。取っとくの大変だった」と横山が言った「Tell Me Something,Happy News」と、『THE GIFT』からの新曲と懐かしい曲を巧みに織り交ぜながら次々に曲を投下。フロアのうねりがどんどん大きなものになる。

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 そんなフロアを眺めながら、「何人、入ってんの? 250人? そんなに入るの?!」と横山が声を上げる。その250枚のチケットに対して、8000人の応募があったという。
「倍率32倍。それに当たったんだから、かなりの強運の持ち主だよ」と横山がこの日、SHELTERに集まった250人の幸運を称えた。
 そして、アリーナとライヴハウスを回ってきた今回のツアーを振り返りながら、難波と横山はそれぞれ「でっかいところもいいんだけど、ライヴハウスがいいね」「こういうところでやると、これ!これ!と思うんだよね」と異口同音に自分達が育った小さなライヴハウスに戻ってきた歓びを口にした。
「俺達、ここの住人だもん」という横山の何気ない一言を、難波が拾い、ハイスタが今はもうない下北沢の屋根裏のスタジオで結成された話やSHELTERのオーディションを受けて、昼間にライヴをやっていた懐かしい話も飛びだした。

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「最初の頃はSHELTERが埋められなかった」と横山が苦笑いしながら語る当時の苦労も今はもういい思い出だ。そんな貴重な話を織り交ぜながら曲は進んでいき、「Starry Night」で観客全員が「Oh oh oh」と歌ったところで、ライヴが始まったばかりの頃は「暑くてもしかたないよ。ライヴハウスなんだから。苦しい人は無理に前に来ないで、バーカウンターで水を飲んだらいい」と言っていた横山もあまりの暑さにさすがに危ないと思ったのか、その間、全員が静かにしているという約束で前代未聞の換気休憩を、1分間、取ることを提案。スタッフが入口と裏口の扉を開けると、ひんやりとした空気が流れ込んできて、今が12月だということを不意に思い出した。

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 そして、ライヴはボサノバ調の「Tinkerbell Hates Goatees」で再スタート。そこから「Dear My Friend」、曲調がすこぶる楽しい「Teenagers Are All Assholes」、観客の感動的なシンガロングにつなげ、観客から立ち上る湯気でステージが霞んで見えるほど(これホント)、一気に盛り上げると、バンドの再出発をダメ押しで印象づけるように「Anther Start Line」「The Gift」とたたみかけ、本編ラストまで駆け抜けた。その間、1曲終わるごとに、スタッフが扉を開け、次の曲が始まるまで、外の空気を取り入れていたことを伝えておきたい。
 もちろん、バンドも観客もそれで満足するわけがない。アンコールを求める声があちこちから飛ぶ中、アンコールまでの時間をつなぐため、一人ステージに出てきた恒岡章(Dr, Cho)が、たまたまこの日が誕生日だという女性を見つけ、「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を歌おうとしたところに横山が加わって、横山の伴奏で恒岡が歌うというライヴハウスならではのサプライズから、アンコールは「この曲も(誕生日祝いに)ぴったりじゃない?」(難波)と横山が歌う「My Girl」からスタートした。

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 この夜、SHELTERに18年ぶりに戻ってきたハイスタは懐かしい思い出を語ったが、同時に「ペースは遅いけど、続けようと3人でそういう話をしている」(難波)とバンドの未来についても語った。
「(もう)ケンカすんなよ!」と客席から声が飛ぶと、「おまえらよりケンカ慣れしているし、言われているほど仲は悪くない(笑)」と横山が答えた。バンドとファンの、そんなさっくばらんなやりとりも楽しい。
 後輩であるHOTSQUALLが4枚、DRADNATSが3枚、アルバムをリリースしているにもかかわらず、結成から26年経って、ようやく4枚目のアルバムを出した自分達がいかにペースが遅いか苦笑いするしかないメンバー達に観客が「5枚目!」と声をかけると、「そうだね。5枚目だね」と難波は頷いた。

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 『THE GIFT』をひっさげてのツアーが終わったら、ハイスタはどうなってしまうんだろうと少なくないファンが気になっていたと思うが、バンドが誕生した下北沢の古巣と言えるライヴハウスのステージで、新たなスタート――HOTSQUALLの言葉を借りるなら、夢をつなげることをファンの前で誓ったことにこそ、18年ぶりにSHELTERに戻ってきた大きな意味があったんじゃないか。  そのライヴを盛大に終わらせたかったのだろう。「150人のキャパの札幌KLUB COUNTER ACTIONに負けている」と横山が、観客が歌う冒頭のシンガロングをやり直させ、観客がそれに答えた「Free」、そして「Stay Gold」とつなげ、そこで終わってもきれいにまとまっていたかもしれない。しかし、「そうじゃないと思ういかもしれないけど、このシチュエーションにぴったりだと俺達が思う曲を最後にやって終わります」(横山)、「道 カッコ ストリートの歌(笑)」(難波)と言い、バンドはタイトル通り前に進むことを歌った「Making The Road Blues」を披露。今日一番のわちゃわちゃした、やんちゃな演奏に、そこにいる誰もが悔いの残らないようにモッシュとクラウドサーフィンで応えたのだった。

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01.Pacific Sun
02.Growing Up
03.All Generations
04.My Heart Feels So Free
05.Tell Me Something,Happy News
06.Pink Panther Theme
07.Time To Crow
08.Standing Still
09.Lonely
10.Can I Be Kind To You
11.Starry Night
12.Tinkerbell Hates Goatees
13.Dear My Friend
14.Teenagers Are All Assholes
15.Fighting Fists,Angry Soul
16.Another Starting Line
17.The Gift
[ encore ]
18.My Girl
19.Stay Gold
20.Making The Road Blues

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