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2017.01.27

ASIAN KUNG-FU GENERATION Live Report

  • REPORT

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TEXT:ヤコウリュウジ

 昨年12月17日の幕張メッセ公演を皮切りにスタートした、結成20周年ツアーもいよいよ終盤戦。厳密に言えば昨年が20周年であるのだが、ライヴ中盤で後藤正文(Vo/G.)が「長く味わいたかった」と語ったように、この日程はその想いの濃さが表れてるに違いない。開演が近くなり、武道館へと足を踏み入れると、男女問わず、実に様々な年齢層のオーディエンスがそのときを待ちかねている様子。20年というキャリアもさることながら、多面的でどこかに偏らない意欲的な活動があるからだろう。前日に引き続き、この日もステージが直視できない見切れ席が発売されるほど、超満員となっていた。

 照明が落ち、会場中に山田貴洋(Ba./Vo.)のベースが鳴った瞬間、暴発寸前まで高まったテンション。彼らが最初に世へ放った作品、『崩壊アンプリファー』の冒頭を飾った曲であり、代表曲のひとつでもある「遥か彼方」でまずは口火を切る。ステージ後方の大型ビジョンの映像と彼らの立ち姿が醸し出す空気感が見事にマッチングし、幻想的かつスタイリッシュな幕開けだ。暗闇の中、ステージのみがライトに照らされ、オーディエンスが自然と吸い寄せられていく。そのムードを持続させたまま「センスレス」を繰り出し、一気にライトが光を放った「アンダースタンド」は実に鮮烈。まるで新たな世界が開けたような感覚すらあり、強烈な感銘を受けた場面のひとつ。そのオーディエンスのリアクションを噛みしめるようなメンバーの姿も印象的だった。

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 そこから一転、しっとりと「暗号のワルツ」を響かせてから、イントロで悲鳴にも似た歓声が湧き上がったのが「ブラックアウト」だ。曲のイメージを増幅させるライトと映像も絡み合い、会場の熱気もグッと高まっていく。そのフィードバックとメンバーの入り込み方を感じたからなのか、思わず伊地知潔(Dr.)から笑みがこぼれるほど。

 大きなハンズクラップが起こり、喜多建介(G./Vo.)が会場の隅々まで視線を飛ばすほど凄まじい一体感を生み出した「君という花」から「やってみるもんだね、20年。生涯、これ以上のバンドは組めないとここ何年かではっきりしました」と改めて後藤が率直な想いを述べてから「すげえ懐かしい曲を」と伸びやかなヴォーカルで披露したのがデビュー前の自主制作盤にも収録されている「粉雪」。伊地知の叩き出すリズムとサポートを務める下村亮介(Key.:the chef cooks me)のタンバリンの煽りもあり、「今を生きて」ではオーディエンスの心を踊らせて会場の雰囲気をさらに盛り上げてくれる。

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 ひと呼吸おいて、OASISのドキュメンタリー映画『オアシス:スーパーソニック』から感銘を受け感じたことを真摯に語り始める後藤。「(この映画のように)自分たちもこの4人で集まるとアジカンになっちゃってへんなパワーが出ちゃう。そこにみんなのエネルギーが混じって、マジックが起こっちゃう。この先も続けていきます」と述べる姿は実に心を打つモノがあった。

「いつも練習してる横浜のスタジオの部屋番号がついてる曲を」と色鮮やかな心緒が投影された「E」、後藤がステージ前方まで身を乗り出した「スタンダード」、鋭いコクが堪能できる「ブラッドサーキュレーター」を矢継ぎ早に放ち、キーボードのイントロから各パートが深く絡み合い、必要最小限のライトで奏でられた「月光」へ。絶妙なテンション感で演奏した後、メンバーは一旦ステージを後にする。

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 そして、「月光」の余韻を残したまま、大型ビジョンには歴代のアーティスト写真が映し出され、新たに期待感が高まり、再びメンバーが登場。ここからは改めてレコーディングした『ソルファ』の収録曲を新録盤の曲順になぞらえて投下していく。とてつもなくエネルギッシュな「振動覚」から、イントロが鳴るやいなや、「待ってました!」と言わんばかりにオーディエンスが大きな歓声をあげ、喜びを噛み締めながら手を伸ばす「リライト」へ。堰を切ったように想いが溢れ出した瞬間だった。

「12年ぶりに録音した『ソルファ』の曲をたくさんやってますけど、あのツアーを思い出した。当時、随分と悔しい想いをして。メンバー間で『アレンジミスだ』と言い合ったり、自分のことは棚に上げて、日記にメンバーの悪口を書いてた(笑)。でも、いろいろスムーズに演奏する方法を見つけたりもして。みんなにも楽しんでもらえたらと思ってます」と笑い話を交えながら当時のことを後藤が語ったが、そう口にできるほどバンドの今が充実してるのだろう。その後も「夜の向こう」や「サイレン」といった『ソルファ』に収録された絶品たちを次々にドロップしていく。

 本編ラストは、ゲストとしてストリングス隊をステージへ招き、オーディエンスへ謝辞を述べてから「海岸通り」。きらびやかで厚みがあり、サウンドとメッセージが渾然一体となったこの曲はとても心地良い風を吹かせてくれた。

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 当然ながらまだまだオーディエンスは冷めやらず、アンコールへ。まず後藤がひとりで登場し「ソラニン」を歌った後、「曲を作るときはいつもひとりぼっちなんですよ、誰かに聴かすまでは。不安もあるし、自分だけの宝物みたいな感覚もある。メンバーにメールで送ってみると、返事が全然返ってこないこともあるけど(笑)、それがメンバーの琴線に触れて、(曲として)みんなに届くと、ひとりぼっちの何かが成仏するような気がします。ありがとう」とソングライティングの根幹を担う彼ならではの心情を伝えてくれた。続いて「Wonder Future」を弾き語り、後藤が一旦ステージから捌けた後、喜多、山田、伊地知に下村も加えた編成で「タイムトラベラー」と「八景」を披露。喜多のヴォーカルと山田のコーラスが醸し出すハーモニーも美しく、また熱気が上昇した後、後藤とストリングス隊が加わり、いよいよフィナーレへ。

 その流れで奏でられた「さよならロストジェネレーション」が生み出した温かさは特筆すべきだろう。現実を受け止めながらしっかりその先の未来を見つける曲のメッセージも相まって、素晴らしいシーンを描き出す。ここで終わりかと思いきや、最後に締め括りとなったのは「新世紀のラブソング」。アンコール中盤から写真撮影の許可が出たこともあり、場内は暗闇の中にスマートフォンや携帯電話による数多の光が浮かんでいく。武道館がまるでひとつの街になったような感動的な情景だ。

 3時間にも及ぶ長丁場となったが、息切れすることもなく、彼らだからこそ描写できる音世界を見事なまでに見せつけられた充実の内容。ライヴを終え、メンバーに下村を加えた5人で詰め掛けたオーディエンスへ感謝の意を表しながら深々と一礼する姿を見て、その進化の先をまだまだ追っていきたいと素直に実感できるライヴだった。

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SET LIST

01 遥か彼方
02 センスレス
03 アンダースタンド
04 暗号のワルツ
05 ブラックアウト
06 君という花
07 粉雪
08 マーチングバンド
09 踵で愛を打ち鳴らせ
10 今を生きて
11 E
12 スタンダード
13 ブラッドサーキュレーター
14 月光
15 振動覚
16 リライト
17 ループ&ループ
18 君の街まで
19 マイワールド
20 夜の向こう
21 ラストシーン
22 サイレン
23 Re:Re:
24 24時
25 真夜中と真昼の夢
26 海岸通り

en01 ソラニン
en02 Wonder Future
en03 タイムトラベラー
en04 八景
en05 さよならロストジェネレイション
en06 新世紀のラブソング

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