2025.12.12
HUSKING BEE「Primary Colors Tour」LIVE REPORT
- REPORT
2025.12.05@新代田FEVER

TEXT:吉羽さおり
PHOTO:Kanade Nishikata
大阪、名古屋を巡ってきたHUSKING BEE「Primary Colors Tour」が12月5日(金)東京・新代田FEVERでファイナルを迎えた。このツアーでは、4曲入りのスペシャル音源『Primary Colors』が会場限定で販売(急遽ツアー直前に配信リリースもされた)。
『Primary Colors』には本ツアー以前からライブで演奏されてきた「Faraway Flow」と、メンバー3人がそれぞれソングライティングを手がけた曲が収録された。音源としては、10thアルバム『eye』(2020年)以来5年ぶりの新作だ。久々のレコ発ワンマンということで、バンドはもちろん観客の熱量も高いライブとなった。
アルバム『FOUR COLOR PROBLEM』(2000年)収録の「#4」でキックオフし、90年代の「8.6」から『eye』収録の「Through Your Eyes」、そして「A Single Word」へと、冒頭からHUSKING BEEの30年の歴史を時間旅行するように新旧の曲が並ぶ。サポートドラムを務めるのは同時代を並走してきた盟友・福田TDC忠章(SCAFUL KING,FRONTIER BACKYARD)。観客は疾走感のあるアンサンブルに沸き、哀愁が滲むメロディにコブシを掲げシンガロングして、磯部正文(Gt/Vo)、平林一哉(Gt/Vo)、工藤哲也(Ba/Cho)によるエネルギッシュなプレイやハーモニーに歓喜の声を上げる。
工藤はこの日“いも”と描かれたTシャツを着ていたが、ライブが終わる頃にはこれがポテトの“いも”でなく“Emo”(イーモウ、エモ)に見えてくると思うと冗談混じりに語る。まさに、コブシにグッと力が入るような、ボルテージの高いエモーショナルな空気がフロアに充満している。
続いての曲は新作『Primary Colors』から、磯部による「Share The Mystery」が披露された。パワフルな四分打ちのキックと高揚感のあるギターのコード感やリフ、そこに力強くも繊細なニュアンスが冴えるメロディやボーカルが乗る、90’Sエモ、当時はエモコアなんて呼ばれていたが、その時代の空気を感じさせる。ハスキン節とも言える歌心、上昇する歌の調べにフロアの温度も高まっていくのを感じるライブチューンだ。
ここに畳み掛けていったのが、バッド・レリジョン的な熱さでがっちりと観客の心を掴んでいく「Put On Fresh Paint」や、大合唱を巻き起こしていく「D.W.S.」といった曲。「Share The Mystery」は新曲の鮮烈さを持ちながらも、ライブで練り上げてきた曲たちとの馴染みもいい。また、次のブロックでは工藤による「FRACTAL相似形」が披露された。工藤の作詞作曲の「FRACTAL相似形」だが、『Primary Colors』のなかではバンドみんなで形作っていったような曲だと制作の裏側が明かされた。
「最初にボイスメモの音源を聴いたときは、絶句しました。どうなることかと思いましたね」(磯部)、「歌詞はAIに任せちゃおうかとも思いましたけど…」(工藤)とは言いながらも、結果とても評判のいい曲になったと語る。ダイナミックなイントロにはじまり、衝動感とエネルギーがそのまま音符になったノイジーでスピード感のあるサウンドに駆動の力強いボーカルが乗る「FRACTAL相似形」。ステージから前のめりに放たれるパワーに、フロアの盛り上がりも加速する。
一転して、平林の歌う「らせんの夜」や「とりどりなうみ」といった“歌”を真っ直ぐに観客の心に浸透させていく曲の並びもいい。フロアからは「最高!」という声が上がった。
続くブロックは平林が作詞作曲をしたファストなハードコアナンバー「Braise It」でスタートし、アグレッシヴにハイトーンを響かせる。ここに「By Chance」や「New Horizon」といったギターフレーズやアンサンブルの妙味がたまらない曲が続き、観客は声を張り上げるように歌い、また全身にその音を浴びせるようにグッと腕を突き上げる。
「New Horizon」のエンディングでじっくりとギターを紡ぎながら歌い上げた平林に、磯部は「めっちゃタメたね、今」と感嘆の声を上げたが、中盤のこのブロックはとくにエモーショナルで、迸るエネルギーで観客を痺れさせる流れとなった。その極め付けとなったのが、「Faraway Flow」だろう。MCで磯部は、この『Primary Color』のリリース前にHi-STANDARD・難波章浩に音源を聴いてもらったときのエピソードを話した。
デモを送って5分後くらいには、「とくに4曲目が良かった」と連絡がきたという。その4曲目というのが「Faraway Flow」であり、「この曲は、ツネさん(Hi-STANDARD、ドラムス常岡章)に贈った曲なんです」と話をしたのだという。鮮やかに織り上げられたギターサウンドと、ドラマティックなグッドメロディが胸揺さぶる曲は、演奏されるたびに輝きや力を増している。そんな曲だ。
「欠けボタンの浜」ではじまった終盤では、「摩訶不思議テーゼ」で観客が一体となってコールをあげ、さらに「A Small Potato’s Mind」でシンガロングのボリュームを上げる。
すでにこの時点で20曲近い曲が演奏されているが、白熱するアンサンブルにフロアの熱気は上昇一方だ。「The Steady-State Theory」では、大きくジャンプしながら観客は声を張り上げ歌う。そして、「今日はありがとう。新代田に新しい風を」(磯部)と、歓声が沸き起こるなか「新利の風」をプレイ。アンサンブルとボーカルとがフロアを颯爽と駆け抜けていったところに、ラスト「Walk」では冒頭のリフに歓喜の声が沸き、頭から観客のシンガロングが響きわたる。
昨年から今年にかけ、バンド結成30周年のツアーを行ったHUSKING BEE。キャリアの面ではベテランであり、生み出す曲にはその貫禄や円熟味もあるのだが、ステージに立っている3人が醸すのは、エネルギッシュに音にコブシを上げ、感情を震わせるパンク、ハードコアキッズのままの姿だ。
音源としては久々のリリースとなったが、『Primary Colors』にはそんなフレンドリーで、エバーグリーンな曲が詰まっている。今も曲は作り続けているということで、来年も新作を出したいというMCもあったので、期待したい。
アンコールでは、街にイルミネーションが灯るこの季節にふさわしい「青い点滅」など3曲を披露し、全25曲にわたるセットリストでツアーを締めくくったHUSKING BEE。
「みんな満喫した? また会おう」という言葉で、2025年最後のワンマンを晴れやかな笑顔で結んだ。
●SET LIST●
01. #4
02. 8.6
03. Through Your Eyes
04. A Single Word
05. Share The Mystery
06. Put On Fresh Paint
07. D.W.S
08. ロバの口真似
09. Beat It
10. FRACTAL 相似形
11. らせんの夜
12. とりどりなうみ
13. Braise It
14. By Chance
15. New Horizon
16. Faraway Flow
17. 欠けボタンの浜
18. 摩訶不思議テーゼ
19. A Small Potato's Mind
20. The Steady-State Theory
21. 新利の風
22. Walk
― ENC ―
E1. 青い点滅
E2. The Sun And The Moon
E3. 一道のイデア
▼HUSKING BEE
https://husking-bee.com/

