NEW
2025.11.17
UNOFFICIAL LINER NOTES ー vol.2 ー
- LINER NOTES

PITPRESSがお届けする「UNOFFICIAL LINER NOTES」。
今回も過去の名盤をご紹介します。
執筆者:ぴあ株式会社 山本 慎二
今回も過去の名盤をご紹介します。
執筆者:ぴあ株式会社 山本 慎二
Back to Basics/Billy Bragg

思えば平野雄大氏と親しくお付き合いをさせていただき長い月日が経った。
もともとはフジテレビで数々の音楽番組を手掛けたTVマンであり憧れの存在。
仕事を通じて幸いにも親しくなる機会をいただいたが、彼の手掛けた番組は相変わらずどれもが刺激的で、特に「FACTORY」というライブハウス仕立ての伝説的な音楽番組は自身の生き方や嗜好性に大きな影響を与えた。そして今なお。
その平野氏が手掛けた番組の一つに「MUSIC SOUP -45r.p.m.(revolution per man)」がある。
毎回1人のアーティストが「自分が影響を受けた45曲」を紹介するという内容であり、好きなアーティストがいつどのような影響を受けて今に至るのか、ルーツを探るには最適な番組であった。
ある回、eastern youth/吉野寿氏が出演。bloodthirsty butchersとともに北海道の雄であることは説明不要であるが、アイルランドが誇るパンクス/STIFF LITTLE FINGERSを例に出し、「寒い北国特有の哀愁があるパンクが自分たちの楽曲」と語っていた。妙に納得した。吉野氏は次に訥々と一人の男について話し始めた。
パンクに限らず、ロックンロールを奏でるには「バンドを組む」ということがある種必要絶対条件であるが、この男は友人がいなくバンドを組むことができなかったという。そのためバンドで音楽を奏でることは諦めた(真実はさておき)。
一人でエレキギターをかき鳴らし、ドラムもベースもなく自身の声色と多少歪んだギターの音色で表現するその楽曲は一音一言を噛み締めるように吐き出される。
パンクロック、プロテストソング、フォークミュージックを内包させた語り口に独特の哀愁あるサウンドを奏でる見たこともないスタイル。その男は名をBilly Braggという。
パンク=バンドサウンドという固定概念があまりにも強かった自分には異色なその存在自体が興味深いものであり、しかしながら哀愁滲み出るキャッチーなサウンドに乗せられた強いメッセージ、そしてそれらは時に左翼的だがロマンティストな一面あり強く魅了された。
閑話休題。
前回、愛知県豊橋市で生まれ育った俺の高校時代の友人・小早川の話をした。数年前に東京で再開し、杯を交わした際の話題がもう一つある。
高校時代にバンドを組んでいた自分だが、高校1年生~2年生はX JAPAN、LUNA SEAに加え、IRON MAIDEN等をコピーする、ある種正当なHR/HM少年であったが、高校3年生の時はGREEN DAY、LAUGHIN' NOSE、THE MINKS等をカバーするパンクバンドに成り代わった。
その変遷で当時一緒に組んでいたメンバー(Vo.)が変わり、新たなメンバーで高校最後の文化祭に臨んだ。Vo.とは喧嘩をしたわけではない、というのがこちらの勝手な認識だが、新たなメンバーで臨んだパンクバンドは下手の横好きながらそれはそれで非常にチェリッシュな思い出であり、高校最後の忘れられない場面となった。
時は流れ、恵比寿の小料理屋。小早川から「お前は仕事柄たくさんのライブを体感してきたと思うが、どのライブが一番心に刺さったか?」と問われた。
自分のキャリアを鑑みて忘れられないライブをいくつか掲げた。小早川も放送作家としてではあるが、それでも人よりはライブに行く機会が多いと聞く。
「じゃあ小早川はどのライブが一番心に残ったか?」と質問をしたところ、「高校3年生の最後の文化祭、川嶋がひとりでギターを搔きむしって叫んだGREEN DAY『BASKET CASE』」と即答。川嶋こそが長くバンド活動をいそしんできたが高校3年生の最後のライブで俺達とバンドを組まなかった高校1~2年のバンド編成時の俺達のボーカリストであり、これにより川嶋はたった一人で文化祭のステージに立ったという。恥ずかしながら最後のステージに浮かれていた俺はその事実すら認識していなかった。
小早川はまばらな観客の中、最後の学園祭にて川嶋が叫ぶ一人きりのBASKET CASEを「哀がある」と表現した。
それはまさにBilly Braggが醸し出すそれであったはずでありそれこそが。
Back to Basics/Billy Bragg
1. The milkman of human kindness
2. To have and to have not
3. Richard
4. Lovers town revisited
5. A new England
6. The man in the iron mask
7. The busy girl buys beauty
8. It says here
9. Love gets dangerous
10. From a Vauxhall Velox
11. The myth of trust
12. The saturday boy
13. Island of no return
14. This guitar says sorry
15. Like soldiers do
16. St. Swithins day
17. Strange things happen
18. A lover sings
19. Betwwen the wars
20. The world turned upside down
21. Which side are you on
リリース:1987年
レーベル:Elektra Records

