【東京】レオ・ヌッチ、最後の来日

2025.07.10更新

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【東京】レオ・ヌッチ、最後の来日

レオ・ヌッチ
奇跡としか呼べない圧巻のパフォーマンスを最後にもう一度

香原斗志(オペラ評論家)


1970年代から世界屈指のバリトンとして、ことにヴェルディを歌えば右に出る者がない頂点として君臨してきたレオ・ヌッチ。そんなレジェンドが旋風を巻き起こしたのは昨年2月。いまなお世界最高のバリトンであることを東京で見せつけた。

82歳目前という年齢でソロ・コンサートを開催するだけでも驚異だが、圧倒的なパフォーマンスの前に言葉を失い、震え、涙があふれた。私は1990年代から内外で何度もヌッチの歌唱を聴き、何歳になっても衰えないのに驚愕してきたが、80代でもこれほどの力を維持していることに、ただ胸を打ち震わせた。

《道化師》の前口上では、朗々たる声の響きばかりか言葉さばきも鮮やかで、トニオという鬱屈した男の魂がこだました。《椿姫》のジェルモンは、息子を思う父の感情に悲壮感すら漂う。《仮面舞踏会》のレナートや《ドン・カルロ》のロドリーゴは、深い悲劇的感情が聴く側の心に深く刺さり、《リゴレット》では憤怒も絶望も、もはや鬼気迫って、こちらの呼吸まで苦しくなるほどだった。

その歌唱の深さは、ヌッチが重ねた年輪に呼応するが、普通は年齢を重ねると、歌唱が衰えて情感をすくえなくなる。ところがヌッチにかぎっては、声力も堅固な歌唱フォームも衰えないため、深まった情感が漏れずに届けられ、奇跡としか呼べない歌唱に聴き手は打ちのめされるのである。

そんなヌッチがキャリアの最後に、十八番の《椿姫》と《リゴレット》に絞った1回かぎりのコンサートを開く。イタリアの精鋭奏者の伴奏という最高の条件のもと、パフォーマンスを披露する。演奏とか歌唱とかいう言葉では到底語り切れない、選ばれた人間だけの神がかりな力が披露されるはずである。

※TOP写真:©Roberto Ricci

日程
公演期間 公演時間 会場 料金 備考
公演期間
2025.11.09(日)
公演時間
開演 13:30
会場
サントリーホール 大ホール (東京都)
料金
S席 28,000円 A席 23,000円 B席 18,000円 C席 14,000円
備考
受付
一般発売 受付期間:2025.06.28(土) 10:00~ 2025.11.08(土) 10:00 申込み
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