通崎睦美 木琴リサイタル「2つの扉」。演奏と文章でつながる新たな木琴デイズ

2026.10.14

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通崎コラム1

木琴(シロフォン)奏者の通崎睦美が、11月21日にサントリーホール、ブルーローズでリサイタルを行う。往年の名奏者、平岡養一(1907~81)が愛奏した木琴を演奏しながら、この楽器の唯一無二の魅力を伝えていこうというコンサートだ。

文筆家としても知られる通崎の著書に、平岡養一の生涯を追った評伝『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』がある。第36回サントリー学芸賞と第24回吉田秀和賞を受賞するなど高い評価を受け、現在の彼女の活動の原点ともなった1冊だ。長く入手困難だったこの本が、11月2日に白水社から4万字に及ぶ増補を施して刊行される(※)。そこには2005年に平岡の木琴を受け継いで以後の、通崎自身のエピソードも綴られている。

「2013年に単行本の『木琴デイズ』を出してからどんなことがあったか。そこから書き始めました。吉田秀和賞の贈呈式に小澤征爾さんがお見えになり、祝辞で平岡養一との出会いを話してくださったこと、私がなぜか企業系のセミナーで講演したことからキッコーマンの創業家である茂木家と平岡家のつながりがわかったこと、など。そこには私自身も知らなかったことや思いもよらなかったこともあって、1冊の本を書いたことで平岡さんの木琴から、新しい縁がつながっていったように感じています」


『木琴デイズ』は平岡養一の人と音楽に迫り、その業績と魅力を余すところなく伝える優れた評伝だ。日本におけるシロフォンやマリンバといった鍵盤打楽器の受容史としても興味深い。だが何よりもこの評伝を読み応えのあるものにしているのは、通崎が受け継いだ木琴「ディーガン・アーティスト・スペシャル・ザイロフォンNo.266」の存在だ。それを見つめる彼女のまなざしには、この楽器の過去と未来に寄せる、同じ木琴奏者としての深い思いが宿る。新たに書き下ろされたエピソードの数々は、この「ディーガン」とともに歩んだ彼女自身の『木琴デイズ』とも呼べるものだろう。


「平岡さんは木琴を演奏することで一時代を築いた。私は演奏だからこそ伝わること、文章だからこそ伝えられることがあると実感している。だからその両方で木琴の世界を伝えていきたいと思っています。単行本では平岡さんに焦点を当てていて、私自身のことはできるかぎり封印しましたが、増補で書いたことの多くは主語が"私"。平岡さんが歩んだ木琴デイズが、今度は私を通していろいろな人に広がっていくような風景を、読む人に感じていただければうれしいです」

通崎コラム3
平岡養一、ニューヨーク、NBCのスタジオにて。
ディーガン・アーティスト・スペシャル・ザイロフォン
No.266-David Harvey氏提供

今回のリサイタルのテーマは「2つの扉」。通崎が信頼を寄せる4人の弦楽器奏者とともに、第1部ではクラシック、第2部では国内外のポピュラーな楽曲や日本民謡を散りばめ、それぞれの扉を開くように木琴の多彩な響きを届けてゆく。音楽のジャンルを軽やかに横断しつつ聴く者を華やいだ気持ちに誘う音色は、彼女の木琴ならではの持ち味だ。ハイドンとバルトークでは、1stヴァイオリンのパートを木琴で演奏するという技巧も披露。平岡ゆかりの「お江戸日本橋」から「八木節」までも飛び出す後半の乗りも楽しい。そしてそれを聴く私たちには「音楽」と「本」という「2つの扉」も開かれている。

「平岡系と通崎系の両方も楽しめるプログラム。で、どこを切っても平岡系が入っている。みたいな(笑)。でも20年、平岡さんの木琴を演奏してきて、少し私自身の音楽ができて来たかな、とも思います。平岡さんは“Xylophone can sing”(木琴は歌える)という言葉を残しているんだけど、私は木琴で『おしゃべりができる』ようになりたい。木琴で『話すことができる』域まで行ってみたい。目標はそこですね。ハイドンの音楽などではきっとそれができると思うから」



通崎コラム書籍


(※)〈白水Uブックス 人文知への扉〉
増補 木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」 通崎睦美
(解説=小沼純一 新書判 定価2000円+税)



取材/文:逢坂聖也(音楽ライター)

※TOP写真:通崎睦美(木琴)(撮影:姫田蘭)



通崎睦美 木琴リサイタル ~2つの扉
通崎コラムチラシおもて通崎コラムチラシうら

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2670382

11月21日(土) 14:00開演
サントリーホール ブルーローズ(小ホール)

 
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