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神奈川フィル来季ラインナップ発表! 多彩な初演に挑む沼尻体制6年目

2026.09.14

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神奈川フィル記者会見0907 1

9月7日(月)、神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、2027-2028シーズン(2027年4月〜2028年3月)の主催公演プログラムを発表し、記者会見を開いた。会見には、音楽監督の沼尻竜典らが登壇。前シーズンの会見に続き、定期会員やサポーター組織「ブルーダル・フューチャー」の寄付者も招待され、ファンとオーケストラが直接対話できるオープンな雰囲気の中で進められた。

冒頭、上野孝理事長から楽団の今後に関わる重大な課題が報告された。本拠地「横浜みなとみらいホール」が設備更新工事のため2028年4月から1年間全館休館に入る。同年度後半には「ミューザ川崎シンフォニーホール」も休館が予定され、過去に使用していた「神奈川県民ホール」も再開の見通しのないまま休館中だ。いわば「2028年ホール問題」。深刻だ。大きな痛手だが、上野理事長は「全力を挙げて乗り切る対応策を検討中」と、引き続き地域に根ざし、豊かな社会づくりに貢献する決意を語った。また、盟友同士である沼尻音楽監督と榊原徹音楽主幹の“掛け合い”による説明では、円安や航空運賃高騰が海外アーティスト招聘を直撃している苦しい懐事情にも話題が及び、沼尻監督自らが海外演奏家と直接交渉するなど、現場の工夫で質の高いラインナップを維持している舞台裏が明かされた。

さて、前シーズン(2026-2027)は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番やブルックナー交響曲第7番、マーラー交響曲第3番、オペラ《トスカ》など、大作・王道の名曲が並んだ。これに対し、沼尻体制6年目を迎える2027-2028シーズンは、いわば「多彩な初演への挑戦」だ。委嘱新作や隠れた名作を含め、多数の「楽団初演」が組み込まれた。

まず注目されるのは、大編成のシンフォニック作品を含む、楽団初演の数々。

ラヴェル:《ダフニスとクロエ》全曲(2027年4月/みなとみらい):
沼尻監督念願の全曲上演。これまでもハイ・クォリティな演奏を聴かせているプロ合唱団「神奈川ハーモニック・クワイア」とともに色彩豊かな大作に挑む。

シェーンベルク:《ペレアスとメリザンド》(2028年1月/みなとみらい):
後期ロマン派の濃密な響きを湛えた大作。ウィーン・フィルのコンサートマスター、アルベナ・ダナイローヴァを迎えるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と併せて。

R.シュトラウス:《家庭交響曲》(2027年9月/みなとみらい):
武満徹《系図(Family Tree)》と組み合わせ、“ファミリー”をテーマに、沼尻監督が「ものすごい数の音符」と語る大編成作品に挑む。

グラズノフ:交響曲第5番(2027年7月/みなとみらい):
ダニエル・ライスキン指揮のもと、10代の気鋭ソフィア・リュウのベートーヴェンの協奏曲とともにロシア・ロマン派の知られざる作品に初挑戦する。

記者会見の様子
©Chiharu Kurihara

一方、現代の作曲家や若手実力派との協働による新作・邦人作品、そしてバロックから現代を一本の糸で結ぶ「Classic Modern」の試みも見逃せない。多様な空間で伝統と革新が交錯するプログラムが展開される。

尾高惇忠:《チェロ協奏曲》(2027年5月/みなとみらい):
広上淳一が恩師・尾高惇忠の遺作を指揮。2021年の初演を担った宮田大との共演で、後半のシューベルト《グレイト》とともに聴かせる。

鈴木優人×石田泰尚:《四季》と《四大元素》(2027年5月/音楽堂):
鈴木優人のチェンバロ弾き振りと首席ソロ・コンマス石田泰尚のヴァイオリンにより、ヴィヴァルディ《四季》やルベル《四大元素》で魅せる。“自然”をキーワードに、3月に横浜市内で開幕する「GREEN×EXPO 2027」との連動企画でもある。

阪田知樹:委嘱新曲(世界初演)&弾き振り(2027年7月/音楽堂):
ピアノだけでなく作曲・指揮でも多才ぶりを発揮する阪田知樹が、神奈川フィルからの委嘱3曲目となる管弦楽新曲を初演。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番の弾き振りも披露する。

永井秀和:《管弦楽と尺八のための新曲》(世界初演)(2028年1月/音楽堂):
神奈川出身の若手作曲家・永井秀和による尺八(長谷川将山)とオーケストラの新作。シューベルトの作品の間に置き、外国人指揮者ヤン・ヴィレム・デ・フリーント指揮の視点で和楽器の響きを聴かせる。

オスカー・ヨッケル:管弦楽新曲(世界初演)(2028年3月/みなとみらい):
今年4月の東京二期会《ルル》の指揮でも大きな評判を呼んだドイツの新鋭オスカー・ヨッケルを迎え、自作の管弦楽新曲を世界初演。ラヴェル《マ・メール・ロワ》全曲、ストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》も指揮する。

さらに、シリーズを彩るオペラや重厚なシンフォニーも、もちろん健在だ。

演奏会形式オペラとして5年目を迎える「Dramatic Series」では、プッチーニの歌劇《ラ・ボエーム》(2027年6月19日)を上演。沼尻監督のもと、佐藤康子、宮里直樹ら、所属の枠を越えたオール・ジャパンの歌手陣が集う。沼尻監督は、オーケストラが主体となってフルのオペラ上演を続けることについて、「この国のオペラの生き残りをどこに見出していくかという試みのひとつ」と、オペラへの熱い思いを語った。

またミューザ川崎での「Beethoven Ring」シリーズでは、小泉和裕によるベルリオーズ《幻想交響曲》(2027年6月)、沼尻指揮×清水和音によるベートーヴェン《皇帝》およびブルックナー交響曲第6番(2028年3月)など、手ごたえたっぷりの名曲が並ぶ。

コスト高騰やホール問題に直面しながらも、沼尻と神奈川フィルが示したのは、守りに回ることなく音楽的な挑戦を続ける姿勢だ。王道の名曲から初演作品まで、多彩なプログラムが並ぶ2027-2028シーズン。新たな発見に出会える一年となりそうだ。
記者会見の様子
©Chiharu Kurihara

※取材・文:宮本明
※TOP:©Chiharu Kurihara

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2027-2028シーズン コンサートスケジュール

【横浜みなとみらいシリーズ】(全9回)会場:横浜みなとみらいホール
・第422回 2027年4月24日(土)沼尻竜典指揮
シャブリエ:「楽しい行進曲」*、ラヴェル:《ダフニスとクロエ》全曲* 他(合唱/神奈川ハーモニック・クワイア)
・第423回 2027年5月15日(土)広上淳一指揮
尾高惇忠:《チェロ協奏曲》*(チェロ/宮田大)、シューベルト:交響曲第8番《グレイト》
・第424回 2027年7月17日(土)ダニエル・ライスキン指揮
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番(ピアノ/ソフィア・リュウ)、グラズノフ:交響曲第5番* 他
・第425回 2027年9月4日(土)沼尻竜典指揮
武満徹:《系図》(アコーディオン/大田智美、語り/調整中)、R.シュトラウス:《家庭交響曲》*
・第426回 2027年10月16日(土)ゲオルク・フリッチュ指揮
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第 5番(ピアノ/アブデル・ラーマン・エル=バシャ)、ブラームス:交響曲第4番他
・第427回 2027年11月27日(土)小泉和裕指揮
チャイコフスキー:交響曲第4番 他
・第428回 2028年1月15日(土)沼尻竜典指揮
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン/アルベナ・ダナイローヴァ)、シェーンベルク:《ペレアスとメリザンド》*
・第429回 2028年2月11日(金・祝)大植英次指揮
R.シュトラウス:《町人貴族》、ラフマニノフ:《交響的舞曲》*
・第430回 2028年3月4日(土)オスカー・ヨッケル指揮
ヨッケル:委嘱新曲(世界初演)*、ラヴェル:《マ・メール・ロワ》全曲、ストラヴィンスキー:《ペトルーシュカ》

【神奈川県立音楽堂シリーズ〈Classic Modern〉】(全4回)会場:神奈川県立音楽堂
・第40回 2027年5月22日(土)鈴木優人指揮・チェンバロ
ヴィヴァルディ:《四季》(ヴァイオリン/石田泰尚)、ルベル:《四大元素》他
・第41回 2027年7月3日(土)阪田知樹指揮・ピアノ
阪田知樹:委嘱新曲(世界初演)*、ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第 1番(トランペット/林辰則) 他
・第42回 2028年1月29日(土)ヤン・ヴィレム・デ・フリーント指揮
永井秀和:《管弦楽と尺八のための新曲》*(尺八/長谷川将山)、シューベルト:交響曲第6番他
・第43回 2028年2月19日(土):沼尻竜典指揮
シューマン:交響曲第1番《春》 他

【ミューザ川崎シリーズ〈Beethoven Ring〉】(全3回)会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
・第7回 2027年6月6日(日)小泉和裕指揮
シューベルト:交響曲第7番《未完成》、ベルリオーズ:《幻想交響曲》
・第8回 2027年11月16日(火)ロバート・ムーディー指揮
(プログラム調整中)
・第9回 2028年3月17日(金)沼尻竜典指揮
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》(ピアノ/清水和音)、ブルックナー:交響曲第6番

【Dramatic Series(セミステージ形式オペラ)】
・2027年6月19日(土)横浜みなとみらいホール
プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》
沼尻竜典指揮、佐藤康子(ミミ)、宮里直樹(ロドルフォ)、砂田愛梨(ムゼッタ)、須藤慎吾(マルチェッロ) 他

【特別演奏会 ベートーヴェン「第九」】
・2027年12月19日(日)横浜みなとみらいホール
・2027年12月20日(月)ミューザ川崎シンフォニーホール
沼尻竜典指揮
フンパーディンク:《ヘンゼルとグレーテル》序曲、ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》

(*は楽団初演)

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