ピーター・フィリップスが語るタリス・スコラーズの歩みとルネサンス音楽の魅力。半世紀を超えて磨かれる声の芸術

2026.06.26

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ピーター・フィリップス 写真1©Hugo Glendinning

半世紀以上、ルネッサンス合唱音楽の第一線で活躍を続けるタリス・スコラーズ。メンバーも入れ替わっているが、演奏水準はますます高くなっている。創設者であり、現在も指揮をとるピーター・フィリップスに話を聞いた。

―フィリップスさんが「タリス・スコラーズ」を創設された1973年当時、このようなルネッサンスの宗教音楽をレパートリーとする団体は他には存在しなかったと思います。ここまで続くと想像されていましたか?

フィリップス(以下P):いいえ。想像もしていませんでした。僕たちは学生で若かったし、コンサートで皆さんの前で歌うのが楽しかった。それを繰り返しているうちに、お客様がお金を払ってくださるレベルになり、プロになろうと決意したのです。10年くらいかかりましたが。

―現在でこそこのような団体も増えましたが、当時はルネッサンス時代の演奏法も知られていませんでした。演奏法はご自分で研究されたのですか?

P:そうですね。16世紀にはどのように演奏されたのか、想像しながら研究していました。私はとにかくルネッサンス音楽がやりたかった。イギリスの教会の少年合唱団ではルネッサンスの宗教音楽がしばしば歌われていたのですが、それはあくまで礼拝の中での話です。私たちはそれとは違う、コンサートとしてお客様に提供できる水準にしたかったのです。オーケストラが交響曲を演奏するようにね。

合唱団の名前の由来であるトマス・タリスは、ルネッサンス時代のイギリスを代表する作曲家です。私はタリスの作品が大好きですし、50年以上経ってもこの名前が気に入っているので、この名前を選んでよかったと思っています。

―今回の来日公演のプログラムについて、選曲の理由やコンセプトなどをお聞かせいただけますか?

ピーター・フィリップス
©Valérie Batselaere

P:「パレストリーナとラッスス」の方は、昨年、パレストリーナのアニバーサリーイヤー(注:生誕500年)だったので、パレストリーナと一人の同時代人、ビクトリア、バード、モンテヴェルディなどを組み合わせたプログラムを組みました。これはそのひとつです。ラッススはまさにパレストリーナの同時代人で、16世紀半ばの大家同士ですし、互いにどう影響し合ったかもわかる、いい組み合わせだと思います。

「聖なる歌」と題されたプログラムはもっと幅広い時代の作品を網羅していますが、グレゴリオ聖歌をベースにしている点で共通しています。現代の作曲家であるアルヴォ・ペルトの作品もです。その共通点を感じていただければと思います。

―「聖なる歌」プログラムのハイライトはアレグリの《ミゼレーレ》ですが、この曲は高い人気を誇ります。その理由はどこにあるとお考えですか?

P:この作品を聴く体験は無二だと思います。ソプラノが高いハ音を何度も歌いますが、ここがとても惹きつけられるのです。モーツァルトが14歳の時にヴァチカンでこの曲を耳にし、感動して楽譜なしで採譜したという有名なエピソードも人気の理由だと思いますね。

―半世紀以上活動を続け、かつ演奏水準を上げてきた秘密を教えていただけますか?

ピーター・フィリップス
©Peter Adamik

P:自分にもメンバーにもとても厳しく接してきたことでしょうか。職人が絶えず技を磨いているように、常にベターな仕事をするように努力しています。歌手の皆さんはとても若返っていて、とても優秀です。僕らの録音をたくさん聴いてから入ってくる、というのもあるのではないかと思います。

―現代においてルネッサンスの宗教音楽を演奏する意義はどこにあると思われますか?

P:楽器を使わない声だけの音楽というのは、スピリチュアルだと感じます。そしてリラックスできる。気忙しいこの世の中から、リラックスした美しい空間へ誘う力がある。それを実現するためには、私たちがいいものを届けないといけないわけですが。

―日本の聴衆へのメッセージをいただけますか?

P:日本の聴衆の方々の前で歌うのはとても好きです。音の世界やその世界に含まれる意味を、よりよく理解していただけると思うからです。また日本のファンにお会いできるのはとても楽しみです。オペラシティのコンサートホールも、形も含めてとても好きなのです。またあそこでみなさまに音楽を届けられることを、本当に楽しみにしています。

取材・文:加藤浩子(音楽物書き)
TOP:写真:©Hugo Glendinning

ピーター・フィリップス ©堀 衛

タリス・スコラーズ

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2665816

7月15日(水) 19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

 
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