こんにちは!指揮者の坂入健司郎です。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。日常が戻り、夏の訪れを感じさせる気候となってきました。私のゴールデンウィークは、ラ・フォル・ジュルネに出演したり、とてつもない演奏会に足を運んだりしてあっという間の1週間でした。
今日は、その「とてつもない演奏会」、山田和樹マエストロが指揮・プロデュースを務めた水野修孝『交響的変容』の演奏会について書きたいと思います。
●再演不可能と言われた世界最大級の作品が34年ぶりに奇跡の再演!
今年92歳にならんとする作曲家・水野修孝氏が、1960年代から構想を始め、約25年をかけて完成させた『交響的変容』を2026年4月1日より東京芸術劇場の芸術監督を務める山田和樹マエストロが指揮・プロデュースして34年ぶりに東京芸術劇場で再演されました。
『交響的変容』の初演は1992年9月20日、幕張メッセ イベントホールにて岩城宏之マエストロの指揮で行われました。幕張メッセでクラシック音楽⁉…それもそのはず、500人以上の合唱隊、200人近くのオーケストラ、そして演奏時間は3時間半という世界でも類を見ない作品なのです。これが再演されたことは奇跡的。全席完売で会場は歴史的イヴェントを体験しようと恐ろしいほどの緊張感に満たされておりました。
第1部〈テュッティの変容〉は約25分程度の作品。大オーケストラで20世紀のクラシックを象徴するような不協和音を提示しつつも、これまた20世紀を代表するジャズやポップスのオフビートのリズムを加えて、すべてのジャンルの音楽を内包する作品であることを高らかに提示します。
第2部〈メロディーとハーモニーの変容〉は約20分程度の作品。弦楽器のロマンティックなメロディに導かれますが、突如打楽器とチューブラベル(鐘)が炸裂。金管も加わって阿鼻叫喚を作ります。チューブラベル(鐘)が東京芸術劇場の客席にまんべんなく6台配置され、360度のサラウンドで聞き手に迫ります。
第3部〈ビートリズムの変容〉は約30分程度の作品。ジャズや1980年代に流行したフュージョン系の音楽をオーケストラで演奏します。もはや「闇鍋」というような感じで様々なジャンルの音楽が炸裂。クライマックスには、34年前の初演も担当した林英哲さんの和太鼓に加えて、武藤厚志さんのティンパニソロによる和洋打楽器合戦が繰り広げられ、圧巻の演奏でした。
第4部〈合唱とオーケストラの変容〉は約120分という本作のメインとなる作品で、全6章にわたります。前半の第1章「予感」、第2章「核と原爆への恐れ」、第3章「原爆の章」は、文字通り原爆の恐ろしさをオーケストラの大音響と日本語を中心とした合唱によって描き出されます。「人類は果して原爆から身を守ることができるか」という言葉を重ね、最後は静謐な祈りとなって曲を締めくくります。
後半は第4章「キリエとカオス」、第5章「新しい生命と喜びへの歌」、第6章「無常観と祈り」は、とりわけ第4章「キリエとカオス」が衝撃的。東京音楽大学、青山学院大学グリーンハーモニー合唱団、慶應義塾大学混声合唱団楽友会、東京大学柏葉会合唱団による6群の合唱が客席を取り囲み、東南アジア諸国の歌が同時進行、オーケストラはワーグナー:《マイスタージンガー》1幕前奏曲とR・シュトラウスの《英雄の生涯》等の引用を演奏し、カオスな音響の渦を生み出します。その後、これまた大規模作品として知られるマーラー:交響曲第8番のフィナーレが引用されたのち、通常編成に戻った合唱によって平和と再生を歌い、超巨大作の幕を締めくくります。
いやはや、とてつもない作品でした。音楽の可能性はここまで無尽蔵なのかと口をあんぐりしてしまった一日でした。すごいものを聴きました。
今日は、水野修孝『交響的変容』の奇跡的な再演についてお話しました。
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