広上淳一インタビュー 日本フィルハーモニー交響楽団 第777回東京定期演奏会にむけて

2025.12.19

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日本フィル 第777回東京定期演奏会 チラシ

年明け1月の東京定期では、20世紀ロシアを代表する作曲家ドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906~75)が最晩年に書いた傑作、交響曲第15番(1971年作曲)をお愉しみいただきます。聴きやすいのに謎めいた不思議な曲と言いますか‥‥おもちゃ箱のようでもありながら、のぞき込んでみると深淵が広がっているような、とても面白い作品です。

広上「自分もいま70歳近くなってきて、この曲にあらためて何か共感するものを覚えるんです。‥‥この曲の第1楽章には、ロッシーニの《ウィリアム・テル》序曲の引用が出てきたりするんですよね。

あれだけ壮大な作品をたくさん書いて、何度も命の危険にさらされる苦しみを経験したショスタコーヴィチが、人生の最後にこんな交響曲を書いた。ここにあるのは、ある種の〈虚無感〉であり〈諦念〉でもある。彼はこの曲で、自分の身体を骸骨にして見せたような気がするんですね。

打楽器の合奏で静かに終わってゆく‥‥そこで響くスネアドラム[小太鼓]のリズムなんて、まるで『スパイ大作戦』みたいですが(笑)、深いですよ。そこには〈世界は昔に比べてこれだけ便利な時代になったのに、どうして人間は幸せになれていないのか‥‥〉という問いかけも響いている。

自分の人生を振り返ってみても、予期しなかったことが良い結果に結びついたり、逆もあったりします。私も人生の終末を考えなきゃいけないわけですが、音楽家としては悔しさがあるわけですよ。〈もっと出来るはずだ〉とか。あるいは逆に〈いやそんなことはない、無理してここまで来れたんだ〉とも思ったりして、両方の思いが交錯するわけです。その〈諦念〉や〈ノスタルジー〉が、この曲にも重なります。」

そしてコンサート前半では、トルコの鬼才ピアニストにして作曲家、ファジル・サイ(1970~)のチェロ協奏曲《Never Give Up》(2017年)をお聴きいただきます。

広上「トマさんは素敵なチェリストです。彼女がぜひこの曲を、と希望されました。サイは凄い才能ですから。ピアノも完璧なテクニックを持っていて上手いし作曲も凄い。穏やかな中にも非常に激しいものを持った、細かいところまで感じ取りながら大きく俯瞰して捉えられる、素晴らしい音楽家です。」

この《ネヴァー・ギブ・アップ》は、ヨーロッパとトルコで起きた痛ましいテロ事件に焦点を当てた作品。悲歌を挟んで最後は〈希望の歌〉で終わるコンチェルトは、タイトルに込められた〈自由と平和への叫び〉を響かせます。ショスタコーヴィチ作品と併せることで、照らし合うものも深いと思います。


ききて:山野雄大





日本フィルハーモニー交響楽団
第777回東京定期演奏会

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2564405

2026年1月16日(金) 19:00開演(18:20開場)
2026年1月17日(土) 14:00開演(13:10開場)
サントリーホール

指揮:広上淳一[フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
チェロ:カミーユ・トマ

ファジル・サイ:チェロ協奏曲《Never give up》 op.73
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 イ長調 op.141

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