メディアアーティストの落合陽一と日本フィルハーモニー交響楽団が2018年より続けてきたコラボレーション企画の第9弾となる《null²する音楽会》の東京公演が8月21日(木)にサントリーホールで開催され、8月30日(土)には大阪・関西万博にて公演が行われる。
7月上旬、東京・渋谷のセルリアンタワー能楽堂にて報道陣向けの懇談会が開催。落合をはじめ、指揮者の広上淳一、同公演の映像の生演奏を担うビジュアルデザインスタジオ「WOW」の近藤樹、出演者の野村万蔵(能楽狂言方)、馬野正基(能楽シテ方)、日本フィルハーモニー交響楽団会長の平井俊邦が出席した。
2018年4月の VOL.1《耳で聴かない音楽会》以来、「テクノロジーで生の音楽体験の喜び拡大」をテーマに開催されてきたこちらのプロジェクト。今回は、落合がプロデューサーを務める万博のパビリオン「null²」をテーマにした音楽会となっており、広上を指揮者に迎え、團伊玖磨の「祝典行進曲」、武満徹の「訓練と休息の音楽-『ホゼー・トレス』より-」、林光の「国盗り物語」、菅野祐悟の「軍師官兵衛」、久石譲の「天空の城ラピュタ」、坂本龍一の「THE LAST EMPEROR」、そして藤倉大の「Water Mirror」[承前啓後継往開来III、委嘱世界初演]など、日本が誇る錚々たる作曲家の楽曲を中心にしたラインナップとなる。
演出を務める落合は今年の公演について「《null²する音楽会》という実にふざけた名前ですが、ふざけているようで真面目であり、真面目なようで、ちょっと抜けています」と評し「今回の音楽会では能と狂言、そして日本がテレビを持った後につくってきた芸術とはいったいどういうものなのか? 1970年の万博以降をふり返りつつ、2025年にこの55年間をどういうふうに捉えるのか?日本が古来より持ってきた文化とメディアアートのような芸術がどう合わさるのか? というのを演目のプログラムを詰めながらみんなで考えているところです」と説明。特に選曲について「1970年の万博から2025年まで各時代にどんな音楽があったのか? 日本人作曲家が丹精込めて音楽をつくってきた中で、劇伴音楽やテレビの音楽が多くあり、広上マエストロと時代ごとに『どんな音楽が良いですかね?』とすり合わせながら、このラインナップになりました」と明かした。
広上は「映像と音楽、日本の伝統文化との相乗効果、共演が一番面白いところ」と語り「どこかで平和に結びつくようなコンセプトにしたいという話はしました。いま世界中がグチャグチャになっていて、1970年の頃、私たちは子どもでしたが、いまよりも精神的に幸せだった気持ちがあります。いろんな分野の芸術のみなさんと共演することで平和に対するメッセージを送れたらいいですねと」と思いを口にした。
藤倉の新曲となる「Water Mirror」では、万蔵が狂言の古典演目で“水”をテーマにした「田植」を、馬野は“鏡”をテーマにした「野守」を披露する。万蔵は「狂言の中でも歌謡やミュージカル的要素がつまっている演目です。この素材を日本フィルの方たちがどう料理してくださるのか? とても楽しみにしています」と語り、馬野も「野守は地面の下にいる鬼神でおどろおどろしいんですが、狂言の『田植』のめでたい華やかなシーンと『野守』の地獄から出てきた黒い世界――それをいかに料理してもらおうか? 板の上に乗ったら、みなさまの演奏の中で能の世界観がうまくマッチングできたらいいなと楽しみにしております」と期待に胸を膨らませていた。
※写真:Ⓒ山口敦
落合陽一×日本フィルプロジェクト VOL.9《null²する音楽会》
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560685
8月21日(木) 19:00開演 サントリーホール
演出・監修:落合陽一
指揮:広上淳一[フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
「映像の奏者」:WOW
能楽シテ方:馬野正基、狂言方:野村万蔵 野村万之丞 野村拳之介 野村眞之介
囃子方:笛/杉信太朗 小鼓/清水和音 大鼓/大倉慶乃助 太鼓/澤田晃良(東京公演)
地謡:浅見慈一 北浪貴裕 長山桂三 小早川康充(東京公演)
進行アシスタント:江原陽子