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カーチュン・ウォンインタビュー 日本フィルハーモニー交響楽団 第773回東京定期演奏会 マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

2025.07.10

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日本フィル 第773回東京定期演奏会 チラシ

カーチュン・ウォンと日本フィルハーモニー交響楽団によるマーラーの交響曲ツィクルスは、日本のクラシック音楽シーンで今もっともホットな公演のひとつだろう。このコンビがマーラーを取り上げると、チケットは瞬く間に完売し、ホールは熱狂に包まれ、終演後には、熱心な音楽ファンがその演奏を巡ってSNSで激論を交わす。9月の第773回東京定期演奏会(サントリーホール)では、そんな両者の6曲目のマーラーとして、第6番《悲劇的》が演奏される。

第6番は、その愛称の通り、人間には抗い難い運命の残酷さをテーマにしたドラマティックな作品である。作品の性質について、ウォンは次のように語っている。

「マーラーの交響曲第6番は“ブラスのシンフォニー”と言っても過言ではないほど、金管楽器が活躍する作品なので、トランペットを吹いていた青年時代から、私はこの交響曲が大好きでした。しかし、指揮者としてこの交響曲を指揮することには長らく慎重でした。というのも、第6番を書いた後にマーラーの人生に起きた様々な悲劇を思い起こすと、とても不吉な作品に思えたからです。第4楽章で振り下ろされるハンマーの響きには、マーラーのその後の人生の予告、あるいは来るべき悲劇への警告が含まれています」

ウォンも言及するハンマーの打撃は、この交響曲のクライマックスと言えるものだが、その回数を巡っては長らく議論が行われてきた。そのほかにも、緩徐楽章とスケルツォ楽章のどちらを先に演奏すべきかについても様々な意見がある。

「ハンマーの回数や〈アンダンテ・モデラート〉と〈スケルツォ〉の順番については、マーラー自身もどうすべきか悩んでいたように、これが絶対に正しいという答えはありません。オーケストラとリハーサルをするなかで、その週の気温、湿度、日差しの強さなども考慮して、芸術的にもっともふさわしい判断をしたいと思っています。どんな選択をしたとしても、最後に辿り着くところは同じであり、作品の本質は決して変わりません。第6番が真の傑作であることを、そうした事実はなにより示しています」

本番の幕が上がる最後の瞬間まで、日本フィルとともにベストを探求するウォンの姿勢は、予定調和とは無縁のものである。そのときその場所でしか聴くことのできないオリジナリティ溢れる音楽は、私たちの心を強く揺さぶるだろう。

「第6番は、3月に演奏した第2番《復活》のドラマを受け継ぐものになると思っています。第6番は音の数がとても多く、極めてヴィルトゥオーソ的な作品ですし、強靭なスタミナも求められます。すでにマーラーの交響曲を5曲、ともに演奏してきた日本フィルと、作曲家の個性が強く表出した第6番に取り組むことができるのを、今からとても楽しみにしています」



日本フィルハーモニー交響楽団
第773回東京定期演奏会


2025年9月12日(金) 19:00開演(18:20開場)
2025年9月13日(土) 14:00開演(13:10開場)
サントリーホール 大ホール

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2522735

■出演
指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]

■曲目
マーラー:交響曲第6番《悲劇的》 イ短調

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