平日の午後、気軽にゆったりとクラシック音楽を楽しめると好評の「アフタヌーン・コンサート・シリーズ」。8月7日(木)にはタレントのふかわりょうが朗読とナビゲーターを務める「“なる”ほど!クラシック~ふかわりょうの注文の多い演奏会」が開かれる。その出演者であり、ふかわとは長年にわたって“コンビ”を組んでいるチェロ奏者・遠藤真理に聞いた。
遠藤真理©Yusuke Matsuyama
2012年から8年間続いたNHK-FMの楽しい音楽番組「きらクラ!」でふかわとともにパーソナリティを務め、クラシック音楽の裾野を広げてきた遠藤。番組終了後も、そのコンサート版「うたたね・クラシック」などでたびたび共演している。「“なる”ほど!クラシック」は、さらにそのスピンオフのような音楽会だ。
ふかわりょう
「“なる”には、名手の腕が「鳴る」。演奏に「唸る」。踊りたく「なる」。がかかっています(笑)。“うたたね”のほうは、やはりどうしても静かな、おっとりとした雰囲気の曲を並べるんですけれども、今回は少し目の覚めるような曲も登場します。
“注文の多い”でおわかりだと思いますが、今回はふかわさんによる宮沢賢治の朗読がコンサートの軸で、そこに音楽が加わります。ただ、語りが宮沢賢治だけになるのかどうかは、これから公演直前まで、みんなで練っていくことになるかもしれません。
ふかわさんは、けっして自分の主張を押し付けるのではなく、みんなの意見を聞きながら自分のアイディアを固めていく人。テレビで見せているのはほんの一面で、じつはずっと博学で知的な方なんです。演奏家の気持ちをとても尊重してくれますし、憧れもお持ちだからなのでしょうけど、音楽への愛をすごく感じます。“お仕事”として、台本どおりにしゃべればいいんでしょ?ではなく、いつも自分の解釈を乗せて、そこに音楽を絡めるということを考えている。いい距離感といい緊張感をつねに共有できる、素敵な方です」
そのふかわの朗読はラジオ番組の中でも何度か披露されたそうで、感情がこもりすぎない独特の語り口がとてもいいという。
「でも、感情をこめてない感じなのに、感受性が豊かなので、自分で読みながら泣いちゃったりするんですよ。しかも嗚咽をあげてボロボロ。そういうことが一回だけじゃなくて何回もありました。感情が、ダイレクトにハートに来るタイプなんですね。純粋な、子供の心を持ったままの大人みたいな人です」
小井土文哉©井村重人
ピアノには小井土文哉。2018年日本音楽コンクール第1位、翌年のヘイスティングス国際ピアノ協奏曲コンクールでも第1位を獲得した俊英は、宮沢賢治と同じ岩手県出身。
「やはり思い入れはとても強いとおっしゃって、打ち合わせの時にすっかり意気投合しました。釜石の出身で震災にも遭われていて、東北への思いも重なるのだと思います。
私はチェリストなので、やはり賢治といえば『セロ弾きのゴーシュ』。今回はゴーシュが登場する予定はないのですが、賢治があんなにチェロを愛してくれたのかと思うと、やはりうれしいですよね。おそらく当時の花巻だと周りにチェロを弾く人なんていなかったと思うのですが、その環境の中でチェロに憧れて自分でも弾き始めたという意識の高さ。楽器を弾く楽しさを知っているって、素晴らしいですよね」
小出岳悠 ©Shigeto Imura
ゲストにも注目。コンサート後半には13歳のヴァイオリニスト小出岳悠が登場する。9歳でレオニード・コーガン国際コンクール(ベルギー)第2位、小学6年生で全日本学生音楽コンクール小学校の部第3位に輝いた才能。TV番組「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」に、“ヴァイオリン博士ちゃん”としても登場した。
「中学2年生! すごいですよね。13歳の私は、受講した講習会の最後の演奏会が最大の舞台でしたから(笑)。学校の勉強との両立も大変だろうと思います。私たちの頃とちがって今は学校が土曜日が休みなので、そのぶん平日はけっこう忙しいんですよ。でも小出くんのSNSを見ていると、日本各地いろんなところで演奏している。そういう発信力も含めて、今の若い世代は柔軟ですよね」
コンサートは小学生以上入場可能だから、夏休みの子供たちにもぜひ体験してもらいたい。朗読もあるのでとっつきやすく、もしコンサートが初めてでも、クラシック音楽に親しむきっかけになりそう。
「私も子供たちと一緒にコンサートに行ったりします。親子で一緒に、同じ方向を向いて同じ音を感じるという体験は、やはり『あ、いいな』と感じるものですので、ぜひ。子供が宮沢賢治を知るきっかけにもなりますし、夏休みの日記にも最適。イチオシです」
取材・文:宮本明
~“なる”ほど!クラシック~ ふかわりょうの「注文の多い演奏会」
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558685
8月7日(木) 13:30開演
東京オペラシティ コンサートホール