ハンガリー出身のガボール・タカーチ=ナジが2025年6月、日本フィルハーモニー交響楽団を初めて指揮する。ヴァイオリンのソリストから弦楽四重奏団のリーダー、オーケストラのコンサートマスターを経て、現在は「指揮に専念している」という。
――日本フィルを振るにあたってのお気持ちは?
「何人かの音楽家仲間から『素晴らしい楽団だ』と聞いています。とりわけ若い頃から存じ上げていた母国ハンガリーの輝かしい名指揮者、エルヴィン・ルカーチさんが長く関わり、亡くなられた後も名誉指揮者に名をとどめていると知り、親近感を覚えます」
――第771回東京定期演奏会はドヴォルジャーク、ブラームス、モーツァルトと、マエストロを育んだ中欧(ミドル・ヨーロッパ)文化圏の音楽です。第407回横浜定期ではモーツァルトにシューベルト、コダーイが加わります。
「ハンガリーとオーストリアは音楽的にも一体です。私はモーツァルトの弦楽四重奏曲全曲を10代で学びました。タカーチ四重奏団にシューベルト解釈を伝授したアマデウス弦楽四重奏団も4人中3人がオーストリア人です。ブラームスもレメーニ、ヨアヒムらハンガリーのヴァイオリニストと親しく、創作上の大きなアイデアを得ています」
――ドヴォルジャークの「チェロ協奏曲」は同じくハンガリー出身の巨匠、ミクローシュ・ペレーニが独奏します。
「ミクローシュはアンドラーシュ・シフとともに、最も深く音楽的に共感できる友人です。2008年には彼のチェロを交えてバルトークの弦楽四重奏曲全6曲を録音し、私はヴァイオリンのキャリアに終止符を打ちました。ドヴォルザークのチェロ協奏曲は個人的に大好きな作品の1つです」
――最後の「ジュピター」交響曲は壮大です。
「全体が『ハレルヤ(賛美)!』の幸福な気分で満たされ、モーツァルトのポジティヴな側面が現れています。今日の紛争だらけの世界にあって、いま一度、人々が互いに愛し合うことの大切さを『ジュピター』に託し、お伝えします」
聞き手と翻訳・執筆:池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
トップ写真:ガボール・タカーチ=ナジ ©Miguel Bueno
第407回横浜定期演奏会
2025年5月31日(土) 17:00開演(16:10開場)
横浜みなとみらいホール 大ホール
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2446726
■出演
指揮:ガボール・タカーチ=ナジ
ピアノ:三浦謙司
■曲目
シューベルト:交響曲第7番《未完成》 ロ短調 D759
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
コダーイ:組曲《ハーリ・ヤーノシュ》 op.15
第771回東京定期演奏会
2025年6月6日(金) 19:00開演(18:20開場)
2025年6月7日(土) 14:00開演(13:10開場)
サントリーホール 大ホール
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2442545
■出演
指揮:ガボール・タカーチ=ナジ
チェロ:ミクローシュ・ペレーニ
■曲目
ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104, B.191
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
モーツァルト:交響曲第41番《ジュピター》 ハ長調 K.551