【坂入健司郎 コラム】指揮者に関する質問にお答えします!

2023.02.06

  • 記事
  • コラム
イラスト指揮者

こんにちは!指揮者の坂入健司郎です。

今日は指揮者に関する疑問・質問にお答えしたいと思います!

●指揮者の1日のサイクルってどんな感じ?普段何してるの?



指揮者は、演奏会に出演する以外に何をやっているのか…?たしかにわかりづらいところです。
指揮者は演奏会で指揮をすることが仕事で、華々しいように見えますが、実は演奏会で指揮をする時間は一握り。とても地味な準備をしています。

まず、オーケストラのリハーサルに臨む前に楽譜の準備をします。
たとえば、ベートーヴェン「運命」の楽譜は現在入手できるものでも5種類以上あります。その5種類の譜面を読んでみると、音符が同じでも、スラー(音をつなげる)やスタッカート(音を区切る)がついていたり、付いていなかったり…千差万別なのです。そこで、まず指揮者は、使用する譜面の選択をします。
次に、弦楽器の弓順(弓の上げ下げを変えるだけで音楽はまったく変わってしまうのです!)を考えたり、管楽器の息遣いを考えたり。その上で、過去の素晴らしい指揮者たちの譜面の書き込みを読んだり、作曲家について調べ直したり…リハーサルや演奏会に臨む前に準備することはたくさんです。

それ以外にも、これからの演奏会に向けた打ち合わせ、公演の宣伝なども大切です。素晴らしい指揮者の方々は日々情報をアップデートし、率先して広報活動等をされています。1日のサイクルでいえば、人それぞれ。朝型の指揮者は譜面を読むのは明け方からお昼まで!という方もいれば、夜型の方は日没から動き始めて朝まで…というように人それぞれです。僕は完全に夜型です。笑


●同じ音楽なのに指揮者によって全然違う演奏になるのってなんで?



「指揮者が何をしている?」という質問にも通じますが、譜面の読み解き方やオーケストラの共同作業を通じて演奏の内容は日々変化していきます。みなさんの音楽の趣味嗜好が千差万別なように、指揮者の音楽の持ってゆき方も千差万別なのです。ただし、指揮者は趣味嗜好で音楽をコントロールしているわけではありません。作曲家が求めている理想にいかに肉薄できるかという、ひとつの解答(この解答は、導き出しても「正解」はないのですが)を模索した結果であるといえます。

例えば、ニコラウス・アーノンクールという指揮者は、1960年代までウィーンのオーケストラでチェロを弾いていましたが、「あまりにも当時の作曲家が求めていた響きと違いすぎる!」と一念発起して新たなオーケストラを立ち上げました。バッハやモーツァルト、ベートーヴェンが生きていた時代の演奏方法を徹底的に調べ上げて、演奏で使用する楽器も当時の楽器を忠実に再現しようと試みました。このようにして指揮者によって全く異なる演奏になるという「表現の幅」が生まれているのです。


●P席がある会場とない会場で振りやすいとか照れるとかありますか?



これは、「ほとんど」ありません(笑)

まず、演奏に集中していること。そして、いい音が鳴ったときでも指揮者は次のいい音を想像して指揮をしなければならないのです。お客様の顔を見たり、鳴っている音に酔いしれたりする時間はありません。

しかし、「ほとんど」と言ったとおり、偶然P席のお客様と目が合うこともあります。なかには双眼鏡越しに目が合うことも(!)たまにドキリとする瞬間はあります。笑


今日は、指揮者に関する疑問にお答えしました。これに限らず、クラシックの演奏会についての素朴な疑問や気になることは、日々、皆様からのご質問を受け付けております。ハッシュタグ「#マエストロケンシロウに聞く」をつけてTwitterでお気軽に呟いてみてください!

坂入健司郎Twitter:https://twitter.com/

 
▲トップへ