【坂入健司郎コラム】作曲家たちのなつやすみ

2024.08.08

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夏休み

こんにちは!指揮者の坂入健司郎です。

今年も夏休みが始まりました!みなさまはどんな夏休みを過ごされる予定でしょうか?
今日は、作曲家が過ごした夏休みをご紹介します。

 

●毎年避暑地で過ごしていたブラームス

ブラームスがウィーンを拠点として活動を始めたのは 1862年、29歳のとき。最初は合唱団の指導や室内楽作品の作曲などに勤しんでいましたが徐々にコンサートへ引っ張りだこになる人気アーティストとなってゆきました。ブラームスは30代に入ってから毎夏を涼しくて景色のいい避暑地で過ごし始めます。ウィーンでの多忙な日々を忘れリフレッシュすることはブラームスにとって大切なルーティンとなり、生涯欠かすことなくさまざま避暑地を巡りました。
とりわけ温泉付き(ドイツ語では温泉地にはバーデン、バートなどと地名につきます)の避暑地がお気に入りだったようで、バーデン・バーデン、バート・イシュル、ヴィースバーデンなどの温泉地で夏を過ごしました。
バーデン・バーデンでは交響曲第1番やドイツ・レクイエムの一部が、バート・イシュルではクラリネット五重奏曲が、ヴィースバーデンでは交響曲第3番が作曲されたことも知られています。まさにブラームスとって夏休みは彼の創造活動の中核になっていたと言えるでしょう。

 

●夏休みにしか作曲をしていなかった!?マーラーのなつやすみ

19世紀の後半になるとヨーロッパには鉄道が発展してきました。作曲家たちが避暑地で夏を過ごすことはトレンドになってきました。ブラームス以上に、夏休みに作曲活動に勤しんでいた音楽家がマーラーです。マーラーは生前、作曲家よりも指揮者として有名でした。ハンブルクやウィーン、そしてニューヨークと世界屈指のオーケストラやオペラハウスの音楽監督を務めるスター指揮者。彼が「作曲家・マーラー」であった時間は、ほぼ避暑地にいるあいだの1〜2ヶ月しか無かったのです!マーラーはスター指揮者らしく夏でもアグレッシブ。晩年のブラームスが滞在していた避暑地、バート・イシュルへ訪れ、ウィーンで指揮者になるお墨付きをもらいに行く(!)など、作曲だけでなく指揮者としての営業活動まで精力的に動きました。現在も愛されている彼の偉大な交響曲は全て夏休みに書かれたと想像すると、いかにマーラーが超人だったかわかりますね。とりわけおすすめなのは、交響曲第3番。ザルツブルク郊外のアッター湖畔のシュタインバッハに作曲小屋を持ち作曲した曲です。これらの美しい自然をみた弟子のワルターにマーラーは、「もう眺めるに及ばないよ。あれらは全部曲にしてしまったから。」と冗談混じりに言ったほどの美しい曲です。是非、夏のヨーロッパを想像しながら聴いてみてください!
※写真は、数年前にシュタインバッハにあるマーラーの作曲小屋へ訪れたときの写真です。


今日は、作曲家たちのなつやすみをご紹介しました。
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