【坂入健司郎 コラム】今年のベストコンサート!

2022.12.20

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みなさま、こんにちは!指揮者の坂入健司郎です。

早いもので、今回が今年最後のコラムとなりました。今年は皆様にとってどんな一年になりましたでしょうか?
私にとって2022年は、昨年「ぴあ」を退職して"専業"指揮者として活動するようになった1年目の年。"34歳のルーキー"だったので、慣れないことの連続でしたが、振り返れば全国各地のオーケストラを指揮させていただき、今年の6月には初めて海外(モナコ・モンテカルロ)で指揮コンクールにも挑み、たくさんの刺激をもらった1年となりました。
また、演奏活動のかたわら、コンサートにもたくさん通うことができました。そこで今日は2022年の極私的ベストコンサートを紹介したいと思います!

■サー・サイモン・ラトルとロンドン響が見せてくれた『新しい景色』


サッカー・ワールドカップの日本代表チームの大活躍で「新しい景色を見よう!」というスローガンが流行語になりましたが、まさにオーケストラの「新しい景色」を見せてくれたのが、サー・サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団の来日公演でした。

小_ロンドン交響楽団の来日公演

私が行ったのは池袋・東京芸術劇場で開催された演奏会でした。最初に演奏されたベルリオーズの序曲「海賊」では、作曲家自身もここまで精密な演奏を考えてなかったのではないかと思ってしまうほどに緻密な演奏でした。8分もかかるはずの作品が、あっという間に終わってしまいました。
かたや、ドビュッシーの「リア王」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」では、美しい瞬間に永遠を感じさせる。刹那と永遠を行き来する、まさに時間芸術の極致を目の当たりにしました。
後半のブルックナーの交響曲第7番も寸分の隙もない演奏。ラトルとロンドン交響楽団は、ブルックナー特有の包み込まれるような神聖な雰囲気だけでは飽き足らないと言わんばかりに、複雑な拍節感を炙り出すことで幾何学的構築感を作り出していました。
いま、この場所で誕生した「新しい音楽」のように聴こえてくる稀有な音楽体験をしました。
音楽表現に正解はない。われわれは日々アップデートしていくべきだと気付かされた忘れがたき演奏会でした。

皆様の2022年ベストコンサートはどんな演奏会だったでしょうか?今年一年を振り返りながら、様々な演奏会を思い返してみるのも楽しいはずです!
秋から始まりましたぴあクラシック公式サイト~poco a poco~のコラム。まだまだ始まったばかりではございますが、今年は大変にお世話になりました。2023年が皆様にとって素晴らしい一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。
このコラムでは日々、皆様からのご質問を受け付けております。ハッシュタグ「#マエストロケンシロウに聞く」をつけてTwitterで気軽に呟いてみてください!

 
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