日本オペラプロジェクト2024 オペラ「卒塔婆小町」/「赤い陣羽織」 2024.01.05 よみもの 豪華オペラ2本立て‼時を超えたミステリアスな異世界への誘い オペラ「卒塔婆小町」泣いて・笑って・てんやわんやの笑劇コメディ オペラ「赤い陣羽織」兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)では、2013年より‟日本オペラ”(日本人作曲家によるオペラ)の隆盛と関西オペラ界の活性化を目指し、「日本オペラプロジェクト」と名付けたプロジェクトを上演しています。今年の日本オペラプロジェクト2024は、関西にゆかりのある2作品を一挙に上演。第1部は文豪・三島由紀夫(1925-1970)の原作に、和歌山県出身で多くの日本オペラ、声楽曲を残している石桁真礼生(1916-1996)が作曲した『卒塔婆小町』。この作品は独特の緊張感のある音楽と世界観が魅力的ですが、完全な形での上演は少なく、今回は貴重な機会となります。 第2部は関西楽壇を牽引し、自身も大阪フィルハーモニー交響楽団のホルン奏者として長きに渡って活躍した大栗裕(1918-1982)が、木下順二(1914-2006)の日本の民話劇(19世紀スペインの作家アラルコン『三角帽子』をベースにしている)に親しみやすい音楽をつけた『赤い陣羽織』を上演します。“静と動“まさに両極端な魅力を持つ作品を、関西が誇るオペラ指揮者・牧村邦彦と、伝統芸能の伝承と狂言の可能性を追求し続ける狂言師・茂山千三郎がタッグを組んでお贈りします。舞台には「能」の様式を取り入れ、まさに「日本の美」を感じられるものになるでしょう。<日本語上演/日本語字幕付>指揮:牧村邦彦演出:茂山千三郎合唱:堺シティオペラ記念合唱団 Female管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団オペラ「卒塔婆小町」10日に老婆・小町役を一人二役で演じる並河寿美さんにお話を伺いました。 ―今回の日本オペラプロジェクトは2作品を上演しますね「静」の『卒塔婆小町』、「動」の『赤い陣羽織』という、日本オペラの名作をお届けします。短い2つの作品を1日で上演するダブルビルは、お互いの作品を引き立たせる効果があります。私が出演する『卒塔婆小町』は、お能を観られる方にとっては有名な演目で、演出の茂山千三郎さんも「狂言師としてこの作品を取り組むのは勇気のいること」と仰る名作です。三島由紀夫の戯曲が原作で、三島さんならではの言葉遣いが独特の世界観を醸し出しています。石桁さんの音楽も西洋音楽ではありますが、日本の近現代を彩った鹿鳴館の時代にマッチしたとても素敵な音楽です。私自身歌っていて、とても心地よいです。―老婆と小町、二役を演じられますね老婆は、かつて小町と呼ばれた魅力的な女性です。若い時の可憐さ、年齢を重ねた深さを演じ分けられればと思います。オペラ歌手として今まで、音楽と演技をいかにリンクさせるか、という事に慣れていたのですが、今回はまったく違う「能の様式」を入れ込むことが大変です。「ブレス(息を吸う)の動きをしないで」と言われた時は困りました。しかし、身体の動きの速度や、仕草など様式を徹底することで、見えてくる景色がありました。これぞ「様式美」ですよね。特に老婆役は普段のテンポ感よりもかなり遅いので大変ですが、その中に彼女の情念であったり、男性を誘惑する妖艶さ、生きてきた色を表現出来ればと思っています。昨年の堺シティオペラでの公演では能舞台で公演を行ったのですが、その時に動きと舞台がしっくりくる感覚がありました。その経験をもとに、改めて役を深めていきたいと思います。―西宮のお客様にひとことお願いします。日本オペラプロジェクトには2013年『夕鶴』以来になります。この間、沢山の舞台を経験させて頂きましたが、今回も新しいチャレンジだと思っています。指揮の牧村さん、演出の千三郎さんと「オペラと能」お互いのジャンルをリスペクトしつつ、どちらも納得できるスタイルを見つけていきたいと思います。共演者や、もう一組も関西を代表するメンバーが揃っています。普段、伝統芸能を楽しんで頂いている方、そして、プッチーニを熱唱し、メリー・ウィドウで歌い踊っている私しかご覧頂いてない方にも、ぜひ私の違う面を見て頂きたいです。オペラ「赤い陣羽織」作品の見どころを、10日公演のおやじ役:中川正崇さん、おかか役:西田真由子さんにお聞きしました。―この作品は、堺シティオペラで2022年に上演されましたね中川 最初はフェニーチェ堺での公演を予定していたのですが、コロナの影響があり、公演直前に中止、そして場所とオーケストラ編成も変更して5月に大槻能楽堂、6月に金剛能楽堂で上演しました。西田 急な変更で大変だったのですが、能楽堂で公演が出来たのは大きな糧になりました。横にも脇正面という客席があるのですが、常に色々な角度から見られているので、ずっと集中していました。中川 橋掛かり(本舞台へ繋がる廊下部分)での演技も重要ですよね。今回の公演でも能舞台の設えになります。いつものオペラとはかなり趣が違って、新鮮だと思います。―演出が狂言師の茂山千三郎さんということで、能(狂言)の様式を演技に取り込んだとのことですが、苦労はありましたか中川 いつものオペラと勝手が違う部分が沢山ありました。限られた動きの中で表現しないといけないので、演技力が試されましたが、役としての芯がしっかり見えたと思います。西田 最初は難しく考えすぎて、うまくいかないこともあったのですが、二人で話し合って自分たちのスタイルを見つけていきました。扇子と所作ですべてを表現しているので「日本の美」みたいなものを凄く感じるものになると思います。中川 あと、千三郎さんが演じる孫太郎(夫婦が飼っている馬)が素晴らしいです。飛び跳ねたり、いきなり近くにいたり、神出鬼没で気が抜けないです。西田 お面をつけて演技されるのですが、少し角度が違うだけでまったく違う表情になるんです。まさに名人芸ですよね。―この作品の見どころや、ご自身の役について教えてください 中川 囲炉裏を囲む、団らんのシーンですね。同じ木下順二原作の『夕鶴』にも重要な場面として出てきますが、やはり日本人の原風景というか、人間の温かさを感じるシーンですね。そして、作曲の大栗さんがホルン奏者だったので、金管楽器が大事な所で使われています。オーケストラと歌との掛け合いなどもあり、そこにも注目してほしいです。西田 おかかの歌う「子守歌」のシーンがあるんですけど、シンプルかつ自由で優しさに溢れる好きな歌です。日常の中にある幸せを感じることが出来ます。それと、おやじとおかか、代官と奥方、男性は偉そうにして愛するべきアホ、女性はしっかりしていて裏で手綱を引いている、普遍的な夫婦の関係がとても面白く描かれています。おかかと奥方は会話する所は少ないのですが、とても通じ合える部分があるんです。農民でもお殿様でも一緒で、最後は赦して平和に終わる。まさにモーツァルトの『フィガロの結婚』と同じですね。中川 他の役も個性があって、出演者も適材適所。演じる人が変われば、創り方も変わってくるので、もう一組も観てもらえると、更に愉しみが広がると思います。西田 あと衣裳にも注目してほしいです。茂山家に伝わる由緒ある狂言の衣装を一部使用するのですが、これが凄く素敵なんです。生地の質感、デザインも綺麗で可愛らしいものもあります。中川 しっかりしている分、重いので動くのは大変ですが、、、。タイトルにもなっている“赤い陣羽織“も印象的ですよね。―お客様に向けてメッセージをお願いします西田 中川さんは西宮市出身ですし、私も神戸女学院大学出身、講師として勤務して8年になります。お互いにホームグラウンドともいえる芸術文化センターで、関西ならではの作品を演じられるのはとても嬉しく光栄です。中川 期間を空けずに改めて演じることが出来るのはとても有難いですし、さらに役を深めて臨めれば。気楽に観られる作品なので、ぜひたくさんの方にお越し頂ければと思います。■チケット情報https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347727