こんにちは!指揮者の坂入健司郎です。
今日は、世界を代表するマエストロ(指揮者のことを敬意を持ってマエストロと呼びます)であるウラディーミル・フェドセーエフさんについて紹介します!
⚫︎91歳になる巨匠、ウラディーミル・フェドセーエフについて
11月から、ウラディーミル・フェドセーエフが来日し、NHK交響楽団で2公演、広島交響楽団で1公演の演奏会を指揮します。マエストロ・フェドセーエフは、御年91歳!ソヴィエト連邦のレニングラード(現・サンクトペテルブルク)に生まれ。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって900日間近くにわたり包囲された「レニングラード包囲戦」を生き残った方のひとりでもあります。
マエストロ・フェドセーエフと、私の出会いは19年前の2004年に遡ります。当時、高校生だった私は、フェドセーエフが指揮したチャイコフスキーの演奏会で雷に打たれたような衝撃を受け、無謀にもサイン会に並び、「指揮を教えてほしい」とお願いしたことがきっかけでマエストロとの交流が始まりました。意外にも、マエストロは気さくに「今後、モスクワでもウィーンでも日本でも、リハーサルを観においで」とおっしゃってくださり、それからは日本ではもちろんのこと、ドイツ、オーストリア、ロシアなどにも飛んでマエストロの一挙手一投足を間近で観て、今もなお学んでいます。こんな無鉄砲な青年も優しく受け入れてくれたように、マエストロ・フェドセーエフは、彼の温かい人柄が音楽から滲み出ていることが最大の魅力。リハーサルやインタビューでは度々「音楽は人々を救済する」と語り、音楽が人々を救うのだ、という強い使命感をもつマエストロです。
そんなフェドセーエフのエピソードをもうひとつ。長年音楽監督を務めるモスクワ放送交響楽団(現・チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラ)は、1991年末にソヴィエトが崩壊したタイミングでそれまで国営だったモスクワ放送交響楽団への助成は途絶え、自主運営を余儀なくされました。ロシア連邦設立とともに新たに創設されたオーケストラへ団員の流出が続く中、マエストロは単独でヨーロッパのオーケストラでの指揮活動をひろげ、自身の得た収入でロシアに残るモスクワ放送交響楽団の楽団員を惜しげもなく支援しました。ロシア・ルーブルの貨幣価値が急落し、最も困難な時期にはヨーロッパから団員へ食糧を送ることもあったといいます。こうした涙ぐましい努力と愛情によってオーケストラと指揮者の関係は家族を超えるような絆となり、見事名門オーケストラの音を蘇らせたのです。
⚫︎フェドセーエフによる珠玉のロシア傑作選を一挙に堪能できる1ヶ月!
今回のマエストロ・フェドセーエフの来日では、多種多様なロシア音楽の傑作を取り上げます。まずは11月20日(月)には、NHK交響楽団とチャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」を全曲取り上げます。5年前にも同じ組み合わせで、取り上げたプログラムでその時の公演はいまだに語り継がれる名演でした。夢の再共演が実現するのです!
続いて、11月25日、26日には、NHK交響楽団とフェドセーエフの最も得意とするスヴィリードフ、チャイコフスキー、リムスキー・コルサコフなどの佳曲を一挙上演!そして、12月2日には広島交響楽団とラフマニノフの最大傑作、交響曲第2番に取り組みます。いずれも聴き逃せないコンサート。是非会場へ足を運んで体験していただけたらと思います!
今日は、ウラディーミル・フェドセーエフさんについてご紹介しました。クラシック音楽についての素朴な疑問や気になることは、日々、皆様からのご質問を受け付けております。ハッシュタグ「#マエストロケンシロウに聞く」をつけてTwitterでお気軽に呟いてみてください!坂入健司郎Twitter:https://twitter.com/siegfried512