ノットと東響が明らかにする、唯一無二の作曲家たちの傑作の真価

2023.09.22

  • よみもの
ジョナサン・ノット

 いま国内屈指の成果を挙げ続けているオーケストラと指揮者のコンビが、東京交響楽団(東響)と音楽監督ジョナサン・ノットである。

2023/24シーズンも「エレクトラ」の超名演をはじめ、マーラーやブラームスの交響曲など、信頼を深める彼らならではの演奏を聴かせている。ノットは10月の東響公演で、こだわりあふれる2つのプログラムを披露する。

 まず、14日・15日はドビュッシー(ノット編)交響的組曲「ペレアスとメリザンド」とヤナーチェク「グラゴル・ミサ」。近代フランスのドビュッシー唯一のオペラ「ペレアスとメリザンド」は、彼独自の精妙極まりないハーモニーと音色が美しく、後世にも大きな影響を与えた重要作。「グラゴル・ミサ」は近代チェコのヤナーチェクの代表作で、4人の独唱と合唱が加わる大作だ。ミサ曲でありながら歌詞は古代スラヴ語、独特の技法で書かれた音楽のユニークさは痛快なほどで、最終盤にはパイプオルガンの超人的なソロまで登場する。いずれもノットの精緻かつ情熱的な指揮でこそ聴きたい傑作で、ヤナーチェクは本場の名歌手陣と東響コーラスと共に心のこもる演奏を作り上げる。

 21日はリゲティ「ハンガリアン・ロック」、ベリオ「声(フォーク・ソングⅡ)」、そしてブルックナーの交響曲第1番の3曲。今年生誕100周年のリゲティは20世紀ハンガリーを代表する現代作曲家で、ノットは以前から継続的に取り上げてきた。今回はチェンバロの難曲「ハンガリアン・ロック」を、大木麻理がオルガンの超絶技巧で聴かせる。続く「声」は20世紀イタリアのベリオによる、技巧的ながら古雅な響きを保つヴィオラのソロに現代的な管弦楽の響きが絡む楽曲で、ヴィオラの世界的名手ディミトリ・ムラトのソロで聴けるのは嬉しい。19世紀オーストリアのブルックナーも、ノットが取り組み続けている作曲家で、初期の意欲作である交響曲第1番をどのように瑞々しく構築するのか、注目となる。

 10月に取り上げられる5人の作曲家たちは、それぞれが生涯にわたり独自の音楽語法を追求したユニークな存在である。特にドビュッシー、ヤナーチェク、ブルックナーの3人は、19世紀に生まれて当時主流の音楽の強い影響下で育ちながら、その影響から脱し、他のどの作曲家にも似ていない唯一無二の音楽を作り上げて、音楽史に輝く存在になったという共通項がある。ノットと東響の実演で、彼らの重要作の真価を体感したい。


文:林昌英
画像:ジョナサン・ノット © K.Miura





■第93回川崎定期演奏会
10月14日(土) 14:00開演
ミューザ川崎シンフォニーホール (神奈川県)

●チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2243581

■第715回定期演奏会
10月15日(日) 14:00開演
サントリーホール 大ホール (東京都)

●チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2243573

●出演
[指揮]ジョナサン・ノット
[独奏・独唱]カテジナ・クネジコヴァ(S) / ステファニー・イラーニ(Ms) / マグヌス・ヴィギリウス(T)
[合唱]東響コーラス


■第135回東京オペラシティシリーズ
10月21日(土) 14:00開演
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル (東京都)

●チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2243711

●出演
[指揮]ジョナサン・ノット
[独奏・独唱]ディミトリ・ムラト(va) / 大木麻理(org)

 
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