夜の本気ダンス New Mini Album「armadillo」全曲解説公開! 2022.09.15 NEWS 2022年9月28日(水)発売の New Mini Album「armadillo」の全曲解説を公開しました! 夜の本気ダンス New Mini Album「armadillo」 2022年9月28日(水) 発売 【CD収録曲】 1 審美眼 2 Wall Flower 3 STARLET 4 VANDALIZE 5 エトランゼ 6 Falling Down <全曲解説> バンド名が示している通り、踊りたくて仕方なくなるサウンドを奏でる夜の本気ダンス。 ダンスとは紛れもなく楽しい行為であり、彼らの音楽を聴く体験も楽しさの塊である点は何の躊躇もなく断言できる。 しかし、「楽しい」とストレートに結びつきやすい「爽快」「陽気」「うぇ~い!」というような言葉も交えて語り始めると、 実像からどんどんかけ離れていく感覚になるのはなぜなのか? その理由に関して、このミニアルバム『armadillo』を聴いて改めてよくわかった。 サウンドのテイスト、描かれている世界はまちまちだが、今作に収録されている6曲に一貫したものは、 端的に表現するならば「危険な香り」だ。油断をしていると噛みつかれかねない野性的なギラギラしたものが、 あらゆる曲から伝わってくる。 キャッチーな仕上がりの「STARLET」に関しても、不穏なトーンを含んでいるのを多くの人が感じ取るだろう。 《健やかな新時代》という爽やかな言葉で始まったと思ったら、その直後に《とはとても言い難い》というフレーズで肩透かしを食らわすこの曲は、どう考えても晴れやかな心情を歌ってはいない。希望の芽を摘む出来事ばかりが起こる現実に対する苛立ちを、様々な部分から感じる。しかし、全体像が鬱々とした印象にはなっていない最大の理由は、やはり「ダンス」なのだと思う。どんなに報われない日々が続いたとしても心を躍らせ、身体を踊らせられる自分という存在を手放さない限り、未来に対する希望の灯は消えないことを、ダンサブル極まりないこの曲はとても素直に信じさせてくれる。耳を傾けると迫って来るのは、理不尽な現実に反旗を翻すファイティングポーズだ。悲しみ、痛み、絶望に対して屈服するのではなく、「踊る」という行為の源にある「楽しみたい」という意志を手放さない姿勢が生々しく刻まれているのを感じる。 絶頂の極みを何度も重ねる「審美眼」、スタイリッシュさと切なさの併せ技「WallFlower」、張り詰めたムードとダンサブルさが絶妙に融合している「VANDALIZE」、ハードボイルドな乾いた質感が漂う「エトランゼ」、《地獄の沙汰もリフ次第》というフレーズ通りの必殺のリフを軸にしながらトランス状態を誘う「FallingDown」――ロックンロールリバイバル直系の熱いエネルギー、ジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせるポストパンクの殺気、ニューウェイヴに通ずる遊び心などを独自のサウンドへと昇華させている他の5曲も、我々リスナーのダンス衝動を激しく後押しする。そして、やはり各々から伝わってくるのは、 希望を捨てない姿勢、逞しい生命力だ。そんな本作のタイトルが『armadillo』なのは、とてもふさわしく感じられる。 敵から襲われた際、鎧のような表皮で覆われた身を丸めて危険を回避するアルマジロ。 愛らしい風貌と強靭さを兼ね備えているあの小型哺乳類は、夜ダンと重なるものがある。 今回の彼らもかっこいい戦い方をしている。 Text : 田中 大 ▲トップへ
バンド名が示している通り、踊りたくて仕方なくなるサウンドを奏でる夜の本気ダンス。
ダンスとは紛れもなく楽しい行為であり、彼らの音楽を聴く体験も楽しさの塊である点は何の躊躇もなく断言できる。
しかし、「楽しい」とストレートに結びつきやすい「爽快」「陽気」「うぇ~い!」というような言葉も交えて語り始めると、
実像からどんどんかけ離れていく感覚になるのはなぜなのか?
その理由に関して、このミニアルバム『armadillo』を聴いて改めてよくわかった。
サウンドのテイスト、描かれている世界はまちまちだが、今作に収録されている6曲に一貫したものは、
端的に表現するならば「危険な香り」だ。油断をしていると噛みつかれかねない野性的なギラギラしたものが、
あらゆる曲から伝わってくる。
キャッチーな仕上がりの「STARLET」に関しても、不穏なトーンを含んでいるのを多くの人が感じ取るだろう。
《健やかな新時代》という爽やかな言葉で始まったと思ったら、その直後に《とはとても言い難い》というフレーズで肩透かしを食らわすこの曲は、どう考えても晴れやかな心情を歌ってはいない。希望の芽を摘む出来事ばかりが起こる現実に対する苛立ちを、様々な部分から感じる。しかし、全体像が鬱々とした印象にはなっていない最大の理由は、やはり「ダンス」なのだと思う。どんなに報われない日々が続いたとしても心を躍らせ、身体を踊らせられる自分という存在を手放さない限り、未来に対する希望の灯は消えないことを、ダンサブル極まりないこの曲はとても素直に信じさせてくれる。耳を傾けると迫って来るのは、理不尽な現実に反旗を翻すファイティングポーズだ。悲しみ、痛み、絶望に対して屈服するのではなく、「踊る」という行為の源にある「楽しみたい」という意志を手放さない姿勢が生々しく刻まれているのを感じる。
絶頂の極みを何度も重ねる「審美眼」、スタイリッシュさと切なさの併せ技「WallFlower」、張り詰めたムードとダンサブルさが絶妙に融合している「VANDALIZE」、ハードボイルドな乾いた質感が漂う「エトランゼ」、《地獄の沙汰もリフ次第》というフレーズ通りの必殺のリフを軸にしながらトランス状態を誘う「FallingDown」――ロックンロールリバイバル直系の熱いエネルギー、ジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせるポストパンクの殺気、ニューウェイヴに通ずる遊び心などを独自のサウンドへと昇華させている他の5曲も、我々リスナーのダンス衝動を激しく後押しする。そして、やはり各々から伝わってくるのは、
希望を捨てない姿勢、逞しい生命力だ。そんな本作のタイトルが『armadillo』なのは、とてもふさわしく感じられる。
敵から襲われた際、鎧のような表皮で覆われた身を丸めて危険を回避するアルマジロ。
愛らしい風貌と強靭さを兼ね備えているあの小型哺乳類は、夜ダンと重なるものがある。
今回の彼らもかっこいい戦い方をしている。
Text : 田中 大