head_logo_pc
head_logo_sp

Grasshopper vol.6/LIVE REPORT公開!

2022.11.11

  • REPORT

10月31日月曜日。渋谷のハロウィンイベントをかいくぐって、下北沢Daisy Barに出演する4バンドとその観客たちが集まった。そのような世間的イベントを放り投げて、ここに集まってきてくれたお客さんへの感謝を込めて、4バンドが歌う。

the pullovers

vol6_report1

陽気なSEをバックにさらっと登場するthe pullovers。バンド名にもちなんでいつものごとくスウェットにパンツ、長めのベルトを垂らしたカジュアルな服装で現れた2人の周りに、ゆるやかな雰囲気を感じる。
そんな緩い雰囲気から一変して、真っ暗になったステージから轟音が鳴り響いた。『朝のテーマ』と名のついた新曲だが、一般的に持つような爽やかな朝のイメージとは大きくかけ離れた、どっしりとした重低音が、感覚を麻痺させる。

vol6_report2

存在を強く見せつけたthe pulloversが次に歌ったのは『うみべの男の子』。美しいアルペジオから始まり、テンションをあげていくバスドラムの音が観客の興奮を掻き立てた。芯のあるCettia(Vo/Ba)の声に、佐々木理久(Gt/Cho)の低音のコーラスが添えられ、歌の厚みが増す。盛り上がりを見せるサビでは、観客が手を挙げた。曲が終わるとそのままドラムが続き、太い音で響くギターリフが印象的な『蹂躙』が始まった。ところどころでがなり声を出すCettiaの歌には、怒りのような、悔しさのような感情が入り混じる。曲のメッセージが十分に伝わるライブを見せてくれた。

vol6_report3

vol6_report4

その後のMCでは「the pulloversです、よろしくお願いします」と軽く挨拶し、雑談の様子から最初に感じた2人の緩い雰囲気を再び感じることができた。次に演奏したのは『むてきのふたり』という新曲。メンバーがオレンジのスポットライトで照らされる。静かにアルペジオが始まり、それに乗せてCettiaが優しく歌う。しかし、曲中で突然ドラムがリズムを変え、激しい曲調になるというギャップをもつ1曲だった。

vol6_report5

曲が終わると時計の音のような音色のドラムが響き渡る。『isle』は、音数の少ない曲で、Cettiaの声がとてもよく際立つ。透き通った声が体に染みこんでくるように思えた。Cettiaは「the pulloversは日常の誰でも感じるような小さな幸せを大事にしています」と、制作への思いを語り、最後の曲を歌いはじめる。ゆっくりとしたバラードの新曲だ。一音一音はっきりと聞こえるが、雫が水に落ちるような繊細なギターの音、フロア全体にふわっと響く歌声。それらの残響音は観客を包み込み、暖かい空間を作り上げた。


umitachi

vol6_report6

マイクスタンドやドラムセットにイルミネーションの小さな照明を巻きつけ、夜のテーマパークのような、煌びやかなステージを作り出す。1曲目にはゆったりとした『息をしている』を歌った。魅力あるマキノアンジュ(Gt/Vo)の歌に、サワ(Dr/Cho)の美しいコーラスが重なり、umitachiの世界観に引き込まれる。2曲目『maman』は民謡のようなテイストで、どこか懐かしさを感じる。

vol6_report7

vol6_report8

umitachiの楽曲は、聴く人の心に温もりを届けてくれる。それは、実家にいるような安心感をもたらした。曲が終わると暗くなり、イルミネーションがキラキラと光る。その中でドラムだけが先に元気よく鳴り出す。それに乗せて、マキノが「改めてこんばんは、umitachiです。よろしくお願いします」と挨拶した。そしてバンドメンバーが向き合い、マキノが「ワンツー!ワンツースリーフォー!」と声をかけて『恋をしようよ』が始まった。軽やかなリズムに、観客の体が小さく揺れる。

vol6_report9

vol6_report10

続いて演奏したのは、マキノとサワの綺麗なハミングが特徴的な『LIFE』。こちらもアップテンポで、胸が高鳴る。曲が終わり、拍手が起こると、ウィンドチャイムのキラキラとした音が聞こえ、ステージの雰囲気が変わる。そしてマキノが語りかけるようにゆっくりと歌い出した。『つよがり』はギターソロの太い音が、マキノの美しい高音ボイスとのギャップを生み出す魅力的な曲だ。最後の曲は『瞼とオレンジ色』。凝ったドラムワークが曲に変化を与える。umitachiの美しい高音ボイスが最大限に発揮されたライブだった。


ひとひら

vol6_report11

出演予定だったすなおがキャンセルとなり、そのピンチヒッターで出演することとなったひとひら。下手にギターボーカル、上手にギター、真ん中にベースが上手を向いて立つ、という形でのステージ配置が個性的だ。山北征尚(Gt/Vo)が、「ひとひらというバンドです。よろしくお願いします」と小声で素早く言うと、その瞬間に、金属音のように鋭くキーンと鳴る大音量のギター音が体を貫き、シューゲイザーの世界に入り込んだ。

vol6_report12

1曲目は『human』。歪んで輪郭のなくなってしまった音、赤黒い照明が、曲の不気味さを際立たせる。太く響く重低音がライブハウスを揺らし、微小な振動を感じさせた。そして、一瞬にしてテンポアップし、『観賞魚の行方』が始まる。インスト音楽のような細かく技巧的な演奏が各所に散りばめられ、圧倒される。曲の切れ目がはっきりとわからないまま『Friends』に入り、演奏においても、曲の流れにおいても、何が起こっているかわからずに置いていかれるような感覚にひとひらの魅力を覚えた。

vol6_report13

vol6_report14

MCを挟み、4曲目は『here』という短い曲。クリーンな音の2本のギターの掛け合いが特徴で、束の間の休息を挟んだようだった。曲が終わり、ドラムだけが続き、『Calm』が始まる。力強いドラムと美しい伴奏に乗る歌声の残響が広がる。途中から突然轟音が鳴らされ、曲に変化を持たせる。次の曲『itsuka』もギターの掛け合いから始まる。電子音のように細くて繊細な音が、芯のあるドラムと歪んだベースが刻むリズムの上にピッタリと乗って気持ちいい。ボーカルの声までも楽器の一部のように曲に馴染んで、ある種のインスト音楽のようだった。そして再び金属音のように叫ぶギターが聞こえ、それを合図に『他人事』が始まる。歌があるところ、ないところとで演奏の音量がはっきりと切り替わり、メリハリがある曲だった。ひとひらの持ち味であるシューゲイザーの圧倒感が感じられた。

vol6_report15

曲が終わると拍手が起こり、ラストに演奏したのは『誰かの季節に』。この日一番の大音量で、全員が首を振ってかき鳴らす。皮膚にその振動が伝わって、直に鋭い音の衝撃を感じたのが理解できた。観客は、最後まで残るギターの轟音を受けきって、ステージに大きな拍手を送った。


pavilion

vol6_report16

初手からギターが汽笛のような、長く迫ってくるような大きい音を鳴らす。ハイハットのカウントから、先ほどの音とは対照的な、ふわっと優しく残響が広がる音で2本のギターの掛け合いが始まる。はじめの1曲は『funny』だ。厚みのある暖かい演奏と叫びながら歌う様子に、1曲目から感動的なエンドロールを見ているかのような感覚に陥る。

vol6_report17

vol6_report18

次に、歪んだギターがスピードを上げて、荒々しく駆け抜ける新曲を披露した。短いこの曲の後に、さらに「新曲をやります」と言って、森(Gt/Vo)の4カウントに合わせて、もう1曲新曲を演奏した。パワフルなドラムの音が、この曲に力を与え、力がみなぎる感覚を味わった。不協和音かと思う瞬間も、なぜか気持ちよく聴こえてきた。演奏の後、静かにチューニングを終え、聞こえるか聞こえないかの声で森は『La La La』と俯きながら次の曲の題名を告げた。ギターのブリッジミュートと歌でささやかに始まるこの曲だが、サビで突然演奏も歌も音量がぐんと上がって、題名通り「La La La」と歌うシンガロングがはじまる。歌も伴奏も、全員がユニゾンするという部分に非常に迫力を感じ、pavilionのかっこ良さを大いに味わえた曲だった。

vol6_report19

「次にやる曲は僕らの中で最もメッセージ性が強い曲」「こういう場所(ライブハウス)でこういう人たちと長くやっていこうねって曲です。『Surf and You』」そう言って森は丁寧なストロークで大切にギターを鳴らす。また、山本(Gt)が激しく動きながら弾く。大きく鳴らされた音は、音の波となって観客に伝染した。

vol6_report20

「あと2曲元気な曲をやって終わります。今日はありがとうございました」と言って、『Yumeji Over Drive』が始まる。疾走感のある曲だ。サビの「Yeah」に合わせて、観客の拳が突き上がった。ピースを掲げる人もいて、この日1番の盛り上がりを見せる。間奏では全員がのけぞって楽器をかき鳴らした。最後に演奏したのは『Hit-or-Miss』。入りのブリッジミュートが始まった時点で、”待ってました!”といった様子で観客が拳を上げる。佐藤(Ba)はリズムに乗って首を振りながら弾き、森は叫んでいるかのような歌声で一生懸命歌い切った。


Text by らいれいな
Photo by Iwata Koichiro

▲トップへ