Grasshopper WEST vol.5/LIVE REPORT公開!
2025.04.15
- REPORT
下北沢にて開催されているチケットぴあ注目の次世代音楽シーンを担う若手アーティスト同士によるイベント「Grasshopper」。その関西編第5回目となる今回は、東心斎橋CONPASSにて開催。島根、愛知、大阪の各地から、Z世代の鋭い感覚でオルタナティブを捉えるミュージシャン達が集まった。
◼︎DNA GAINZ
本日1組目は島根発、DNA GAINZ。「DNAから響く歌の鼓動 体の底から踊り出す」をコンセプトに、2022年の結成から瞬く間に早耳リスナーからの注目を集め、2023年には「FUJI ROCK FESTIVAL '23」、 「"ROOKIE A GO-GO"」に出演した。着々と経験値を積み重ね、今最もエネルギーを秘めているバンドのひとつである。
SEの時計の針が静かに鳴り止み、Vo.ながたなをやの透き通るようなファルセットから始まったのは「slow down town」。穏やかなイントロに迫り来る、Gt.イタガキ タツヤが爆発させる音の奔流と、Ba.はだいぶきとの鮮やかなコーラスが会場の時間感覚を速めていく。
研ぎ澄まされた感覚のまま、続く「巣ニナル」へ。疾走するDr.宏武のビートに全てを乗せ、ながたのシャウトにフロアからも拳が突き上がる。その熱量に応え、重心の低く胸の奥を抉るベースとドラムが、ジェットコースターのような展開を滑らかに紡ぎ、ドライヴしていく。
エモーショナルなアルペジオから止まることなく続くのは、ミッドテンポなセクションとパンキッシュなセクションが往来する壮大な一曲「GOLD HUMAN」。
DNA GAINZ、聴く者の時間感覚を自在に操る力を持っている。演奏技術に裏打ちされたキメの静寂と、その後の爆発によるダイナミクスが、この場にいる者たちの心を今、この瞬間に釘付けにして、相対性理論を奪い去ってくれる。永遠のような一瞬。こんな音楽体験にはそうそう出会えない。
「Grasshopper、バッタって意味らしいです。日々ステップしながら作った曲をやりたいと思います。」というながたの言葉から始まったのは、「Loop!!!」。ライヴアレンジによる冒頭の“4足歩行、羽はいつ生えるのだろう?”という詞が今日のライブタイトルにもどこか重なるような一曲。演奏中のながたの「皆元気ですか?俺は超元気!」という晴れやかな言葉から、彼が今日のこのステージを全力で楽しんでいることがありのままに伝わってきて、思わず顔が綻ぶ。
そして一転、赤いライトで染まったフロアの中、DNA GAINZの真骨頂、ハードな低音を刻む「PARADISE HELL」が幕を開ける。グルーヴィなオルタナティブロックでフロアを縦横無尽に揺らしていく。
ラストはギターの深い残響音が響き渡る中、4人の一糸乱れぬインパクトを連発する「ラフラブ」。まるで人生のままならなさを体現したかのようなめくるめく展開の中、それでもポジティブに生き抜くことを諦めない意思が聴く者に芽生えるような圧巻の演奏で幕を閉じた。
<セットリスト>
slow down town
巣ニナル
GOLD HUMAN
Loop!!!
PARADISE HELL
ラフラブ
◼︎mogari
続く2番手は2020年結成、ロックバンドmogari。パンク、90’sオルタナティブロック、00年代ジャパニーズロックのエッセンスを独自に解釈し、唯一無二のメロディと詞でまとめ上げる。
本番前のサウンドチェックで既にフロアで楽しげに揺れる人々。今日もmogariは絶好調のよう。否応なしに期待が高まった中、入場SEのLed Zeppelin「Gods Times Bad Times」と共に登場。
Vo.Gt. 古賀 凜太郎の「肩の力抜いて最後まで楽しんでいってください!」という言葉から始まったのは、煌びやかな照明が映えるオルタナティブ・ダンサブルなナンバー「寝台列車の夜」。
続いてはGt.ニシムラ シンヤの軽やかなギターリフと古賀の軽妙なヴォーカルの溶け合う新曲「青すぎるブルー」。切なさを湛えたメロディがドライヴし、フロアを着実にmogariの世界へと引き込んでいく。
古賀の「今日めっちゃ楽しみやってん」「ほんまにいいスリーマンや」という和やかな言葉から、この企画で芽生えた新たな絆を感じる。
ここで「カッコいい新曲作ったので聴いてください」という古賀の前フリを120%で超えていく“カッコいい”新曲「タイトル未定」を投下。続け様の新曲に沸き立つオーディエンス。Dr.サダ トモキのタイトなビートとBa.ナイトウ ユウタのうねるベースの上を激烈なギターが炸裂する。
間髪入れず、なんと更に新曲「ロケバン」を投下。古賀のシャウト、ニシムラのチョーキングにボルテージも最高潮に。上昇したフロアのボルテージを限界突発させるように「どうでしょう」へなだれ込む。この日1番の熱気に自然とフロアの誰もが腕を上げていく。フロアとステージが繋がる瞬間に胸が高まる。
「平日からライブハウスに集まる特殊な趣味をお持ちの皆さん、本当にありがとうございます」という愛とユーモアに満ちた古賀の言葉から、今日このフロアに集まったミュージック・フリークたちに届けられるのは「HYPER LOVE SONG」。日々の揺蕩う心模様を描いた切ない詞とグッドメロディが沁み渡る一曲。
ラストはエモーショナルなキラーチューン「街は寝起き」。誰もは拳を突き上げ声高に叫びたくなる「PEACE! LOVE! TX!」というフレーズにシンガロングも巻き起こり、“mogariらしさ”を余すところなく発揮したステージを創り上げてくれた。
<セットリスト>
寝台列車の夜
青すぎるブルー(新曲)
タイトル未定(新曲)
ロックバイアス(新曲)
どうでしょう
HYPER LOVE SONG
街は寝起き
◼︎Kanna
本日トリを務めるのは2001年生まれ、名古屋発の2人組のKanna。同郷であり敬愛するSEAMOをはじめとしたHIP HOP育ちの MC Nouchiと、こよなくロックとギターを愛する Gt. Koshiによる 、1MC1ギターのユニット。「FUJI ROCK FESTIVALʼ 22 -ROOKIE A GO GO-」、「SUMMER SONIC 2022」にも出演し、ジャンルを軽妙に飛び越えたZ世代による新解釈のミクスチャーロックで次々と新たなリスナーを獲得している。
ダンサブルなビートとMC-Nouchiの高速フロウ「ワンウェイ」で幕を開けたKannaのステージに、早速フロアではいくつもの腕が上がり始める。
既に2人と一体感バツグンのCONPASSにファンキーな「Boys&Boys」が投下される。フロアで爆発する「Get up! Get up!」の声に、思わず「めっちゃいいじゃん!」とNouchiも笑みをこぼす。続く「Dive」ではサポートドラムの蓮が生み出すグルーヴィなビートとエレクトリックなシンセサウンドが絡み合い、フロアが狂乱のダンスフロアと化す。
「楽しくなってきたら自由に動いてってください!」というNouchiの言葉に、続く「Naa Naa Love」ではフロアの誰もが自由に揺れ、Kannaの音に身を任せ楽しみ尽くす。
「Kannaはライブハウスにひとりでも来てくれるようなあなたの味方でもいたい」と、フロアの反応への感謝と思いが伝えられ、新曲「You」が投下される。ストレート伝えられる愛の言葉と、KoshiによるKanna史上最高のギターソロが炸裂。間違いなく彼らのアンセムとなること間違いなしの一曲に、フロアからも「新曲かっけえよ!!」の声が上がる。
「疲れて休んでる時間はないですよ!」というNouchiの言葉通り、息つく間もない高速フロウが炸裂する「空」になだれ込む。HIP HOPライクな高速のフロウとハードなギターが火花を散らし、まだまだフロアを燃え上がらせる。
ハードな「空」から一転、Kannaのミクスチャースキルの本領発揮なナンバー「いいんじゃNight!」へ。熱気でムンムンなフロアを右へ左へ揺らしまくり、続くポップでヒップでファンキーな「Make My Day」ではふたりのゴキゲンなスクラッチプレイとギターの掛け合いでフロアを沸かせ、最高にハッピーでグルーヴィな時間を創り出す。
そして興奮と拍手冷めやらぬ中、アンコールではラウドでオルタナティブなナンバー「Super Junky Monkey」を急遽プレイ。フロアを重厚に揺らし尽くしたKanna。2人の個性がぶつかり合い、溶け合い、鍔迫り合い、フロアを巻き込み前人未到の音楽を創り出していく様子に、さらなるKannaの飛翔を感じずにはいられない一夜となった。
<セットリスト>
ワンウェイ
Boys&Boys
Dive
Naa Naa Love
You
空
いいんじゃNight!
Make My Day
En. Super Junky Monkey
それぞれの研ぎ澄まされた感性と愛で、唯一無二の音楽が結びついた今夜のステージが、この先の未来で3組が交わった歴史的な一夜として語られる日がいつか来ることだろう。彼らが高く飛び立つ瞬間を捕捉せよ!
Photo by 桃子
Text by 伊藤博明