Grasshopper WEST vol.4/LIVE REPORT公開!
2024.12.02
- REPORT
冬の訪れを忘れさせるような、軽やかな暖気に満ちた2024年11月13日(水)、アメリカ村 BEYONDにて「Grasshopper WEST vol.4」が開催された。「Grasshopper」は、インディーシーンの聖地下北沢にて、チケットぴあが注目する、次世代音楽シーンを担うアーティスト同士による対バンイベント。その関西編として行われる「Grashopper WEST」の第4回は、yummy’g(O.A.)、アスノポラリス、OKOJO、Subway Daydreamと、それぞれの音楽とポップネスを真摯に追求する新進気鋭の4組が集った。そして会場には幅広い世代の音楽好きが集まり、彼らの飛び立つ瞬間を見届けた。
■yummy’g(O.A.)大阪:2023年11月結成。Vo.Gt.ASUKA、Ba.Cho.ARISA、Dr.とも
Avril Lavigne「He Wasn’t」をSEに登場したのは、オープニング・アクトにして本日最年少バンド、yummy’g。USインディーロックのゴキゲンなサウンドを思わせる、緩急のついた重厚感のあるバンドサウンドとポップなメロディが中毒性バツグンである。ベースのARISAが前に躍り出て始まった「boooom」。結成から一年とは思えないほどのグルーヴィなベースラインと跳ねるドラム、痛快なギターサウンドの完成されたサウンドと、エネルギー漲るASUKAの歌声に、早速オーディエンスも拳を突き上げる。続いて間髪入れずに始まった「Monster」ではキャッチーなサビのメロディを武器に、yummy’gの世界へとジリジリと会場を引き込んでいく。
「O.A.という機会をいただけて嬉しいです!」「今日のイベントが良くなるか否かはyummy’gにかかっていると思うんで、全力でやっていきます!」というガッツ溢れるMCからなだれ込むように、バンドの自己紹介とも言えるキラーチューン「I am」へ。
続くUSウェストコーストライクなミドルテンポの「Switch」では、Vo.ASUKAとBa.Cho.ARISAの息のあったコーラスワークが光る。
そしてDr.と もの刻む小気味良いクローズリムとARISAの伸びやかなベースから幕を開ける、ラストの「charge!!」へ。サビでのARISAの「BEYONDいけますか!」の声に腕を突き上げて応えるオーディエンス。トップバッターに相応しい爆発力溢れる演奏は、今日のライヴの成功を高らかに告げるようであった。
1. boooom
2.Monster
MC
3.I am
4. switch
5.charge!!
■アスノポラリス広島:2019年結成。Ba.タカト、Vo.Gt.落合勇弥、Gt.きょーへい、Dr.かなめ
続いてステージに上がるのは、今回唯一の広島からやってきたアスノポラリス。「自信のない日々にそっと寄り添う音楽」をコンセプトに、熱量のあるバンドサウンドを貫くようなハイトーンな歌声で、Vo.Gt.落合が暖かい詞を抒情的に歌い上げるバンドだ。
Vo.Gt.落合の爪弾く、柔らかなアルペジオから幕を開けたのは、そんな彼らのコンセプトを体現したかのような優しくも力強い、エモーショナルな一曲「銀木犀」。
続いて「大阪調子どうですか!」というMCから始まったのは、疾走感溢れるイントロからシンガロンが響く、終始ブチ上がりのキラーチューン「たまに間違える僕たちは」。「楽しみに来たんだろ!?」という落合のアジテーションに呼応して次々に上がっていくオーディエンスの拳に、バンドの演奏もギアが上がっていく。
温まったフロアを四つ打ちのダンサブルなビートで踊らせ、ギターを掻き鳴らし高らかに歌い上げる「あの日のまま」ではGt.きょーへいのカッティングとオクターブを基調とした軽やかなギターソロが白眉。
「今日はGrasshopper、バッタの日なんで、ぴょんぴょん跳ねてさ、上に上に登り詰めていこうっていう日。今日が一番高いところが見えますように」という落合の言葉から始まったのは、祈りのようなロマンチックな歌詞が優しく胸に沁みる「言えない」。オーディエンスのクラップが響き渡る暖かな空間を創り上げた。
そして《夢を見ているうちはまた会う日までさよならだ》という歌詞が切なくも心を優しく照らしてくれる「あの夏」を披露し、オーディエンスの心と耳を逃さずしっかりと掴んでいく。
「何か試練を越えるたびに新たな試練がやってくるけど、たまには休ませてくれよって思うけど、ここまで辿り着いたのならそれが全て、忘れちゃいけないことちゃんと覚えておいて、忘れたくない日をずっとずっと覚えておいて」というMCから《だんだん歳をとってしわくちゃになっても良いのさ》という歌詞が寄り添ってくれるラスト「だんだん」へ。
「水曜日のド平日からライヴハウスに集まってくれるあなたたち、俺たちはあなたを全力で楽しませるので、あなたたちも僕らを楽しませてくださいね」という落合の言葉を体現するように、フロアと一体になったライヴを繰り広げた。
<セットリスト>
1.銀木犀
2.たまに間違える僕たちは
3.あの日のまま
MC
4.言えない
5.あの夏
MC
6.だんだん
■OKOJO大阪:2018年結成。Vo.Ba.まつした、Dr.Cho.ヤマト、Support Gt.えぬ
DNCE「グッド・デイ」で入場したのは3組目OKOJO。可愛らしいバンド名とは裏腹に、切なくも暖かいラブソングを息の合った演奏と共に熱く歌い上げる。
痺れるようなギターリフで幕を開ける「ラブソング」では早速オーディエンスのクラップが会場に響き渡る。真摯に愛の唄を歌い続けるOKOJOの代名詞と言えるような一曲だ。Support Gt.えぬがギターをこれでもかと弾き倒し、会場の熱量を否応なしに高めていく。
続く2曲目はイントロのテクニカルなギターフレーズと折に触れて打ち出されるカッティングが印象的な「サイチェン・マイフォーチュン」。サイチェンとは中国語で「さようなら」という意味。夏の終わりと共に訪れる愛する人との別れを甘く切なく、ダンサブルに表現する。続いての「最高なラブソング」ではDr.Cho.ヤマトの刻む四つ打ちとえぬのカッティングが絡み合い、心地よくフロアを揺らしていく。
続く「ええんやけど」はスロウなバラード。関西弁で綴られることでより心の柔らかい部分に染み込んでくる歌詞とメロディと泣きのコードに、オーディエンスもじっと聴き入る。
Dr.やまとのほろ苦い恋のエピソードからの「なりゆきまかせ」では、冒頭よりオーディエンスの拳も上がる。
四つ打ちのビートが切なさを加速させていく中で、確実にフロアのボルテージも上がっていく。そして「またライヴハウスでお会いできることを楽しみにしています」という言葉から、ラストの「遮二無二に恋しない」へ。
跳ねるベースラインとドラムの刻みがガッチリと噛み合い、揺れ動く心と、それでも進んでいく時間の物語を進めていく。彼らの演奏に聴き惚れるオーディエンスの様子が特に印象的なステージだった。
<セットリスト>
1.ラブソング
2.サイチェン・マイフォーチュン
3.最高なラブソング
4.ええんやけど
MC
5.なりゆきまかせ
6.遮二無二に恋しない
■Subway Daydream大阪:2020年結成。Vo.たまみ、Gt.Vo.藤島雅斗、Gt.藤島裕斗、Dr.Kana、Support Ba.チャーリー
そして今回トリを務めるのはSubway Daydream。キャッチーなヴォーカルとドープな音楽愛に溢れた楽曲が絶妙なバランスで混じり合う、タイムレスな輝きを放つバンドだ。
早速一発目から、フロアをドライヴさせる「Stand By Me」を投下。Vo.たまみの「Grasshopper行きましょう!」の声に呼応するように熱量を高めていくフロア。更にそれに呼応するようにメンバーたちのシンガロングが一体感を高めていく。続く「ケサランパサラン」はギターポップへの憧憬が眩しい一曲。キュートなサビの《ケサランパサラン》のフレーズは思わず口ずさんでしまう中毒性を秘めている。アウトロではキュートなこれまでのキュートなポップネスから一転、ツインギターのユニゾンフレーズとスイッチングしたハイテンポなビートで畳み掛け、オーディエンスのボルテージも早速マックスに。
高まったボルテージもそのまま、イントロの凶暴なスネアの乱れ打ちとギターフィードバック、そしてVo.たまみの《Are you ready? Mad honey!》 のキュートなフレーズが印象的な「マッドハニー」へ雪崩れ込んでいく。90’sグランジ愛が炸裂したヘヴィなサウンドで、音楽好きのオーディエンスの心もガッチリと捕まえ、踊らせていく。
たまみの「一緒に皆で前に進んでいけるように、ここで一生懸命歌わせていただきます」という言葉から、果敢に同期を取り込み、一歩を踏み出した楽曲「kiosk」へ。等身大の生活と葛藤を描く一曲で、オーディエンスとの心の距離をグッと縮めていく。
続いてたまみがアコースティックギターを抱え始まったのは「Timeless Melody」。幾重にも重なるエヴァーグリーンなメロディラインが心地よくオーディエンスの身体を揺さぶっていく。
「最後まで居てくれてありがとう!」という感謝の気持ちから、最後はバンドきってのアンセム「Radio Star」へ。サビでは《Radio Star》のコールがフロアに響き渡り、今日の多幸感に満ちたライヴを象徴するかのようであった。
ライヴを観ていてこんなにもメンバーたちの「音楽が好きで仕方がない!」気持ちがビシバシ伝わってくるバンドもそうそういない。そんな気持ちがフロア全体にも伝播していくような、多幸感溢れるステージであった。
<セットリスト>
1.Stand By Me
2.ケサランパサラン
3.マッドハニー
4.Teddy Bear
MC
5.kiosk
6.Timeless Melody
7.Radio Star
EN.Freeway
全4バンドが、それぞれの音楽とポップネスを真摯に追求し、オーディエンスと時を共にした3時間。才能ある新進気鋭のアーティストたちがGrasshopper(=バッタ)のように勢いよく飛び立てるようなイベントにしたい!という思いの込められた本企画をきっかけに、これからもまだ見ぬアーティストが高く高く飛び立つ様を沢山の音楽好きたちに見届けていってほしい。
Text:伊藤博明
Photo:桃子