Crazy Jump 2024/LIVE REPORT公開!
2024.11.01
- REPORT
- Crazy Jump
10月13日、3連休の中日に「Grasshopper × PIA MUSIC COMPLEX presents. 『Crazy Jump 2024』」が豊洲PITにて開催された。チケットぴあが注目する次世代音楽シーンを担う若手アーティスト同士による対バンイベント「Grasshopper」と、チケットぴあ主催の野外音楽フェスティバル「PIA MUSIC COMPLEX」のコラボイベントとして、今回が初開催となる。
タイムテーブルには音楽性も人間性もバラバラな6組が並んだ、文字どおりの異種格闘技戦。どのアーティストもこの日限りの熱演を届けてくれたステージの模様をレポートする。
■林萌々子(Hump Back)
トップバッターはHump Backのギターボーカルを務める林萌々子。SEなしで登場し「やりますか」とひと言。濃い木目調のアコースティックギターと身一つ、ステージ中央でスポットライトを浴びながら、当日の蒸し暑さを忘れてしまうほど軽やかなリズムで“おやすみ”をつま弾いていく。《お風呂に入って眠ろうか》のフレーズに続き、「好きに過ごしてください。寝てもうてもええし」とやさしく呼びかけ“暮らし”へ。《この暮らしを愛している》と同じ空間を共にするかけがえのない時間を分かち合った。
「しばらく産休・育休で活動休止してたんですけど、今日は弾き語りで呼んでもらいました。『Crazy Jump』ありがとうございます!」と感謝を述べると、生まれて半年になる息子の活発な様子を誇らしげに語りながら、「あんたもそうやったで」と母親から聞いた自身の幼少期のエピソードと重ね合わせる。「わたしはそのときからドキドキワクワクしたいみたいな気持ちがあったんでしょうけど、今は子育てという未知なる道を歩いてて、昔も今も変わらず。常に探求心を忘れずに謳歌する人生のテーマソングを届けつつ、「知らん道だけじゃなく危ない道をわたっておりました」と“思春期”を続けて披露。チューニング中にはフロアから「出産おめでとう!」という言葉が送られるなど、温かいムードに包まれた。
「昨日書き上げた新曲やってもいいですか?」と届けられたのは、孤独と幸福とが隣り合わせの息子との日々を《気づけば今日も1日が終わる》と思い返しながら心の奥底にそっとしまっておくような、いまだ曲名のない育児讃歌。ラストは「30、今いっちゃんおもろい。大人になるのまじでおもろいねん。楽しみにしとって。ほんで30とか私より上の人たち、一緒に大人がんばっていきましょう」と高らかに歌い上げた。
■フリージアン
SEが流れブルーの照明に包まれながらステージに颯爽と現れたのはフリージアン。「ワンツー!」のかけ声から“悲しみの全てが涙ならば”で口火を切ると、マエダカズシ(Vo)は髪をくしゃくしゃとかき上げながらステージ前方のモニタースピーカーに片足を乗せては、《嗚呼 眠れない夜》と繰り返し思いの丈を飛ばしたのも束の間、続く“夕暮れとオレンジ”ではハンドクラップをあおり、《回る回る回る》で拳をくるくると回しフロアを導いていく。「改めまして、フリージアンです。豊洲PIT初めてです。こんなおっきいところで歌えてさ……次は自分らの力で来ます。その日まで歌い続けることをここに誓います」と“宣誓!”へ移ると、赤く照らされたステージにどくどくと脈打つビートが閃光のように駆け抜けていった。
「神戸から来ました。歌いに来ました。フリージアンです」と大舞台を噛み締めるように、この日のステージにその名を残すように話すマエダ。ちょうど1年前の「Grasshopper WEST vol.1」へのブッキングをきっかけに、そのライブ力でもってまぎれもなく自らの実力でたどり着いた豊洲PITのステージ。「別れの歌を」と告げて奏でられた“サトラ”では、前半3曲とは一転クリーンなエレキギターの音色とコーラスが重なり合う美しいロックバラードが会場中に鳴り響いたかと思えば、“仰げば尊し”では冒頭で「あーーーーー!」と絶叫し、ステージ上手から下手に位置を移しながら鬱屈した思いを放出して見せ、“怪物”ではメンバー各々が躍動的なリズムに身体を揺らし、ときにステップを踏みながらフロアの熱気を高めていった。そして11月16日に渋谷CLUB QUATTROにて開催されるワンマンライブの告知を挟み、ラストの“青瞬”へ。この日フロアと共鳴したかけがえのない時間を最大級の「ありがとう!」で締めくくったフリージアン。記憶に残る35分間だった。
<セットリスト>
1. 悲しみの全てが涙ならば
2. 夕暮れとオレンジ
3. 宣誓!
4. サトラ
5. 仰げば尊し
6. 怪物
7. 青瞬
■Dannie May
“黄ノ歌”でサウンドチェックを終え、意気揚々と登場したDannie Mayのオープニングナンバーは“東京シンドローム”。田中タリラ(Vo/Key)が弾くコミカルなフレーズと点滅するピンク色の照明でエキゾチックな空気を演出すると、「踊ってこうぜー豊洲!」と呼びかけて“アストロビート”へ。マサ(Vo/Gt)とYuno(Vo/Mani)のボーカルリレーと、サビのファルセットでフロアを魅了した。勢いそのままに4カウントで突入した“ぐーぐーぐー”ではマサがハンドマイクに持ち替え、対峙したフロアの熱量を一気に沸点へと押し上げていった。こうなったらもう手が付けられないDannie Mayの面々、不穏なSEで誘う“ダンシングマニア”ではユニゾンでハモる分厚いハーモニーと重低音が効いたビートに踊らずにはいられなかった。
広大なフロアを見渡し「自分が巨人になった気持ち」とユーモアを交えて表現すると、IV―III―VI―I の気持ちいいコード進行に乗せて「クールに踊れーーー!」とあおり“KAMIKAZE”へ。Yunoが見せた両手を顔の横で左右に揺らす振り付けで広大な豊洲PITはたちまちダンスフロアと化し、続く“カオカオ”も曲が進行するにつれて高揚感にどっぷりと浸かっていった。たとえ初見だとしても一瞬で虜にさせてしまう地力を余すところなく発揮してみせたDannie May。ラストはリリースされたばかりのアルバム『Magic Shower』の表題曲“マジックシャワー”。テーマとして掲げた「音楽は魔法か否か」を全身全霊のパフォーマンスで体現し、温かくも非現実的な空間を名残惜しそうにステージを去った。
<セットリスト>
1. 東京シンドローム
2. アストロビート
3. ぐーぐーぐー
4. ダンシングマニア
5. KAMIKAZE
6. カオカオ
7. マジックシャワー
■Atomic Skipper
サウンドチェックから“幻になって”“ブルー・シー・ブルー”“周回軌道列車”と曲を連発して絶好調ぶりを見せつけたのはAtomic Skipper。SEに乗せてステージ中央で円陣を組むと、「ライブハウスと同じように恋をしよう」と誘うように“ハニーマスタード”で開幕。中野未悠(Vo)が赤いマイクコードを伸ばしながらハンドマイクでステージ上手いっぱいまで歩みを進めて歌い上げると、さらなる性急なビートでギアを上げて“幸福論”をドロップ。“メイビー”では中野がフロア中央の段差まで進み腰を下ろすと、「豊洲PITの床で歌うことができるの、今日しかやれないことやりたいわけよ、わたしは」と同志たちに啖呵を切っていき、それに呼応するように久米利弥(Ba)が下手セットに上りジャンプ、フロアは拳を突き上げて応えるなど興奮を隠せない様子だった。
「ライブハウスって場所、最高の音楽がいちばん輝く、そういう超シンプルでかっこいい場所だと思ってるんで、それやりに来ました」という宣言を皮切りに、“動物的生活”“間に合ってます”“スタンドバイミー”とアッパーな曲を立て続けに披露し「めちゃくちゃ気持ちいいぜ」と中野が歓喜の表情を浮かべ、止まることなく“ランドマーク”へ。《何も間違ってないよ》と右手で心臓のあたりを叩き鼓舞してみせると、“一瞬で過ぎる日々を君と”では神門弘也(Gt)、松本和希(Dr)を含む全員コーラスで、過ぎ行く儚い時間を心に刻みつけるようにシンガロングを演出した。そして、イベントを主催するチケットぴあについて触れ、この日呼んでくれたスタッフが大好きだと言ってくれた曲として“星降る夜”へ。ライブハウスはステージとフロアの境界線がなく、人と人とが音楽でつながれる場所。そんな代えのきかない存在を背中に投影しながら、ラストに演奏されたのはライブアンセム“ロックバンドなら”。ロックバンドとしてステージに立った35分間は、どこまでも眩しくライブハウスそのものだった。
<セットリスト>
1. ハニーマスタード
2. 幸福論
3. メイビー
4. 動物的生活
5. 間に合ってます
6. スタンドバイミー
7. ランドマーク
8. 一瞬で過ぎる日々を君と
9. 星降る夜
10. ロックバンドなら
■CVLTE
5番手はCVLTE。定刻になると、大きなスクリーンに映像が流れ始める。無機質な重低音が響き渡るなか、脳内に強烈に訴えかけるような「FOCUS」の文字。そしてバンドが演奏を始めると“scorpion.”へ。赤と白の照明が点滅を繰り返し、スクリーンには生命の誕生を想起させるようなコンセプチュアルな映像が流れる。ハンドマイクに声を乗せながら舞うようにステージを行き来するaviel kaei(Vo)の先導でバンドはヘビーなサウンドを展開し、“iShadow.”ではトリッキーなリズムと美しい旋律を見事に融合してみせた。
「CVLTEです。耳を傾けてくれてありがとうございます」と言葉少なめに感謝を伝え、“hellsong.”へ。スクリーンには砂嵐が映され、「IN MY HEAD」の文字がサブリミナル的に差し込まれるなど、ラディカルな印象を残した。“smileY:)”“girls lie.”と壮大なムーブメントを演出し、アンプのローが鳴りっぱなしになっているかと思えば最新曲“eepY.EXE”が演奏され、aviel kaeiはマイクスタンドをステッキのように操りながらステージを闊歩していく。“greedY.”ではステージに転がるように感情をあらわにし、「改めて私たちのために貴重な時間を使ってくださりありがとうございます」とフロアに伝え、カタルシスを生み出しながら“tokyo insomnia.”“memento molly.”と一気に駆け抜けた。重厚なサウンドの容赦ない連射に、無条件に覚醒させられた瞬間だった。
<セットリスト>
1. scorpion.
2. garden.
3. iShadow.
4. hellsong.
5. smileY:)
6. girls lie.
7. eepY.EXE
8. greedY.
9. tokyo insomnia.
10. memento molly.
■KALMA
この日のトリを務めたのはKALMA。SEとして流れる大音量のT-REX“20th Century Boy”をかき消すほどの爆音を鳴らしながら、「最後まで残ってくれてありがとう!」と感謝を述べつつ畑山悠月(Vo/Gt)の「イエーーーイ!」と叫ぶ声が会場中に反響して鼓膜を刺激したスタジアムロックナンバー“Millennium Hero”に続き、一発入魂でイベント終盤のフロアを全肯定する“これでいいんだ”“隣”を連打するなかで、畑山は身震いするようにのけぞりながら倒れ込む場面も。「みんな好きにして。おれもめっちゃ好きにします」と言い放ち、金田竜也(Dr/Cho)の16分音符を多用した細かなビートと2ビートに交互に乗りこなす“ROOM”、さらにマイクスタンドを倒してもなんのその爆速で我が道を行くショートチューン“モーソー”と続く目まぐるしい展開に、フロアの長丁場の疲れも吹っ飛んでいくようだった。
チューニングを終えて“恋人はバンドマン”を丁寧に届けると、「おっきい場所は自分の声が伸びていく感じで、すごく好きです」と大舞台を堪能している様子。「次の曲では自分に歌われてると思って」と伝えた上で演奏された“Oh Baby”では、中盤でフロアに照明が向けられ、《Be happy 笑っていて/Be happy 元気でいて》と飾らないダイレクトな言葉でエールを送った。そして、林萌々子のMCを受けて30代40代が楽しみになって元気になったと話すも、「いつまでも忘れたくない想い」とこぼして“blue!!”へ。将来が楽しみだからこそ、今しか味わえない青さがある――その一瞬を逃すまいと《ずっと青いまま/日々は続いていく》の一節に想いを込めていくスリーピース。最後に、同郷であり同世代のCVLTEと初めて同じステージに立てた喜びを言葉にしながらの“ムソウ”では、自身を含めたすべての夢追い人を抱き締めてみせた。ラストはステージ中央で強靭なトライアングルを形成。11月15日にEX THEATER ROPPONGIで開催されるワンマンライブの告知とともに「またライブハウスで会いましょう」と再会を約束して、「Crazy Jump」は幕を閉じた。
<セットリスト>
1. Millennium Hero
2. これでいいんだ
3. 隣
4. ROOM
5. モーソー
6. 恋人はバンドマン
7. Oh Baby
8. blue!!
9. ムソウ
Photo:清水舞(林萌々子(Hump Back)/Dannie May/KALMA)
シンマチダ(集合写真/フリージアン/Atomic Skipper)
Leo Kosaka(CVLTE)
Text:栄谷悠紀