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Grasshopper WEST vol.3/LIVE REPORT公開!

2024.07.17

  • REPORT

2024624日(月)、大阪・梅田Zeelaにて『Grasshopper WEST vol.3』が開催された。『Grasshopper』は、チケットぴあ注目の次世代音楽シーンを担う若手アーティストを応援するライブハウス企画として2022年にローンチ。同イベントの関西編となる『Grasshopper WEST』第3弾となった今回は、ライブシーン×クラブシーンをコンセプトにNEWLYCwondoaryy3組が出演。三者三様のスタイルでフロアを揺らしたステージの様子をお届けする

 

■NEWLY

定刻の少し前、黒いカーテンの向こうからチューニング音が聴こえてきた。ライブハウス特有の緊張感が会場を包み込む中、紗幕が上がり、NEWLYがドラムにRyo TakahashiPistachio Studio)、サックス/フルートにKenTSoulflex,robe)を迎え、おもむろにセッションを開始。ピンク色の照明が色気のあるムードを漂わせ、Ryo Takahashiのドラムに合わせる2人はたっぷりと休符を確保しながら、緩急を付けたプレイでリスナーを揺らしていく。

 

ジャージーなピアノの音が鳴り始めるとシームレスに「Cogara」へと流れ込み、ショータイムの幕が上がる。サックスの音色が止み、ベースとドラムのミニマムな編成になる瞬間も、全く飽きることのない奥行きのある演奏に驚く。ステージ中央に陣を構え、KenTRyo Takahashi2人とアイコンタクトを交わすNEWLYの姿はさながらコンサートマスターのようであった。

KenTがフルートへと持ち替え、旋律を奏でると、会場後方にいたファンもステージへと吸い寄せられていく。段々とテンポを落としたビートや南国を彷彿とさせるメロディがまったりとした時間を形作った「リズムとフロウ feat.鎮座DOPENESS」、遠くから聴こえてくる虫の声が青いライトとリンクし、夜の海辺を喚起させた「INTRO」を経て、メロウな質感となったフロアでは、アルコールを呷りながら目を閉じてNEYLYの世界観に酔いしれている観客の姿も多く見られた。

 

この日2度目のメンバー紹介を終えると、NEWLYは「次で最後の曲です」と告げる。客席からの惜しむ声を全身に受け、フィナーレに据えられたのは未発表曲。繰り返されるエスニックなビート上で、ベースやフルートのソロが次々と展開される。土台となるリズムが変化しなくとも、上で踊るメロディや楽器が異なることで全く違った表情を見せる面白さが詰まっていた。

 

全編を通じ、休む間もなく次から次へと楽曲を投下し続けていたNEWLY。フロア前方で踊ったり、お酒を求めてバーカウンターへ足を運んだり、友人と話したり。音楽に身を任せ、自然体でいることが肯定される空間が広がる心地よい30分だった。

 

■Cwondo

2番手を務めたCwondoは登場するや否や、白色のムービングライトの下、ブーストされた重低音が内臓を揺らすハイパーポップ的なイントロでボルテージを上げた。

「こんばんは。Cwondoです。お願いします」と挨拶も簡単に、5月にリリースした最新曲「Sorawo」で滑り出すと、4thアルバム『Tae』のオープニングナンバー「Ike Suisui」へと接続。<翻弄迷走 逃げて>と叫ばれた肉声が次第に電子音へと還元され、バグのようにループする。かと思えば、突如として洗練されたメロディに一変し、このギャップに場内からは大歓声が湧出。掲げられたいくつものカップが照明の光を反射する光景は、絶景にほかならなかった。

 

改めて挨拶をすると、何かを話してるようで耳を澄ましても何を話しているか分からない逆再生の声を連想させる音が耳に飛び込んでくる。そう、「1500」だ。疾走感溢れるビートとストロボが心拍数を上げると、矢庭にビートが失われ、ストロボとメロディのみがリフレインされる。緑のレーザーがフロアへと差し込み、ビートが帰還すると、その爆発力で会場を揺らした。

 

後半戦では、1stアルバム『Hernia』から「Twwen」と「Kochi」をパフォーマンス。オクターブを往来するベースラインとブレイクコアの潮流に位置づけられるビートが特徴的な前者でファンを飛び跳ねさせる一方で、ブレス音までをサンプリング音として活用し、思い思いのポイントでオーディエンスを沸かせた後者で火を付ければ、リスナーからは「やばい……」と心の声が漏れる。

 

大阪で演奏できたことへの喜びを話し、「次で最後です。ありがとうございました」と呟いた声が、電子音へと変化していく。「Midori」で幕切れを迎えた後、思わず考え込んでしまったのは、言葉をどう捉えれば良いのかということ。放たれた「ありがとうございました」の言葉は、マイクを通じて形を変え「あ」と「り」、「が」のように単なる音の連なりに落とし込まれる。呼吸音までが楽器になりうる中、歌詞の不確かさ、言葉の繊細さを切に感じる一方で、肉体的なビートやメロディの強固さをまざまざと見せつけられた時間だったと思う。

 



■aryy

この日のアンカーを務めたのはaryy。昨年リリースした1stアルバム『me and the world』のオープナー「me against the world」をSEに姿を表すと、既に高揚感で満たされたフロアをゆっくりと見渡す。同作の流れを再現するように「emotion」で早速トップギアに突入。音割れギリギリのボリュームで<おれはまだ自由になれる?>と問いかけるaryyの背中は、生温い生活を捨て去って大きな世界へと歩んでいく決意を感じさせた。

 

aryyのメランコリックなボーカルが夏の切なさを演出した「summertime feat. Nobuki」を終えると、aryyが投げかけた「ボーカル小さくない?」の問いに対して、オーディエンスからは「小さい!」「もっとボリューム上げて!」の声が上がる。ファンとの密なコミュニケーションを経て、「できるだけ大きな声で歌うわ」と宣言してドロップしたのは「my room is my world feat. hyou)」だ。音響調整のために行われた先刻のやり取りが、<狭いベッド寝ころがって 橙色のギターを弾いたら この部屋はいま世界の真ん中>の3行と混ざり合うことで、事務的なニュアンスを喪失し「小さな部屋で生まれた自身の音楽を叫んでいくのだ」という決意へと変化していく。ギター1本とDJのミニマムな編成からも、部屋の片隅で弾き語りをしているaryyの姿が想起される。初めて6弦を鳴らした瞬間のピュアな喜びが伝わってくる同曲に、貪るように音楽を聴いていた少年時代へのノスタルジアを覚えた。

aryyが放った「昔の曲をやります」の一声を皮切りに、ライブはクライマックスへと雪崩れ込む。<君と僕の ZARAWEGO>のリリックに合わせて自身と客席を順番に指差す様子が印象的だった「Nebula」、柔らかなイントロが穏やかなムードを形成した「bleach」を連投すれば、観客からは「最高!」の歓声が飛ぶ。今宵のラストナンバーに選ばれたのは「life! feat. Harry Teardrop)」。ステージ上を左右目一杯に駆け回り、新調したという深緑のギターを掻き鳴らす風姿は、彼自身が生を叫んでいるようであった。

 



こうしてフィナーレを迎えた『Grasshopper WEST vol.3』。なお、『Grasshopper vol.24』の開催が早くも決定しており、722日(月)、東京・下北沢Flowers Loftにて、SPRINGMAN、かりんちょ落書き、弁天ランドの3組が集結する。開催を来月に控えた『Grasshopper vol.24』、そして次回の『Grasshopper WEST』では、どのような心躍る出会いが待っているのだろうか。

 

Photo by 桃子

Text by 横堀つばさ

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