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Grasshopper vol.18/LIVE REPORT公開!

2023.12.14

  • REPORT

2023年11月27日(月)。第18回目となるぴあ主催Grasshopperは、いつもの下北沢ではなく、渋谷O-nestで開催された。今回出演する3バンド、35.7、チョーキューメイ、ブランデー戦記は年末に開催される大型フェスのステージに立つことが決定している。初回から一貫して若手バンドを応援してきたこの企画だが、今日もまた大きな挑戦を控えた若いバンドマンたちに最大のエールを送る。そしてそこに集う観客も同様だ。超満員のO-nestで大歓声が巻き起こる夜となった。

35.7


タカハシ(Vo/Gt)の弾き語りから『50%』が始まる。ツヤのある声と波打つギターの音が静まり返った空間に響く。繊細なサウンドに緊張が走り、一気に見る人を引き込んだ。『うそうそほんと』では、爽やかなメロディーに寂しげな恋の感情を乗せる。会場からは自然と手拍子が起こり、観客はどんどん35.7のライブにのめり込んでいった。間髪入れずに繋いだ『Hurtful』では、タカハシがギリギリのハイトーンボイスを張り上げる。生きることに苦しみながらも、ギリギリで生活を前に進める。そんなことを歌った歌詞と共鳴する、叫びのようにも聞こえた。


MCを挟み、黄色の神々しい照明の元、「僕の好きな君のうた。」と一節を歌ったあと始まったのは『祝日天国』。活動休止中のかみのはら(Gt)に代わりサポートギターを務めるムネチ(Gt)がステージ前に乗り出してギターリフを響かせる。淡い失恋の歌にも関わらず祝祭感に溢れ、優しくてみずみずしいロックだった。続いて、寂しい雰囲気で始まったのは『すももドロップ』。アップテンポでありながらも切ないその歌を、目を閉じて頷きながら聴いた。


タカハシにとっての宝物のような音楽の数々。その音楽たちへの気持ちを込めた新曲が演奏された。幼い頃に宝探しをするようにして出会った音楽を抱きしめて離さない。そんなタカハシの想いが、聴く人の記憶や体験とリンクする。繰り返し歌う「離さないで」という歌詞が言霊になって心にこびりついた。『バッドリピートエンド』から、再びキラキラと輝く音楽を鳴らし、観客は楽しそうに手をあげた。最後には「1、2、1234!!」と4人での掛け声から『eighteen candle』を。タカハシは笑顔で超満員のフロアを見渡していた。高ぶる感情をむき出しに歌い、会場を大きく盛り上げた。




チョーキューメイ


「よろしくお願いします。」と一言フロアに声をかけた麗(Vo/Gt/Vn)がヴァイオリンを持ち、流麗なメロディーを奏でる。藤井ごん(Ba)が滑らかに弾きこなすベースラインは、この後演奏される曲を想起させた。一曲目は『おやすみパパママ』。麗の独特な発音の歌声が、一つの楽器のように音楽に紛れ込む。観客は手を挙げ、チョーキューメイが生み出すリズムに乗せられていく。続く『故のLOVE』は、ポップでありながらどこかエスニックな雰囲気を醸し出す一曲。繰り返されるメロディーに夢中になり、自然と口ずさめるようになってしまう、中毒性の高い音楽だった。『燃え尽きる君の命』では、大人な雰囲気を醸していた麗の歌声が、少し少女らしく変化した。飛び跳ねながら、楽しそうに演奏する彼女から目が離せない。




中盤戦ではバンドの世界観をより濃く映し出した。『心を照らせ!』では、ピアノのお洒落なコードが中心となって楽曲を彩る。リズミカルに響く歌はまるで打楽器のように気持ちの良いノリを生み出した。そして、今年、チョーキューメイが一躍注目されるきっかけとなった『貴方の恋人になりたい』。印象的かつ単調な歌のフレーズを繰り返しながらも、それを支える伴奏がさまざまな形に小さく変化していく。複数の変奏曲が一曲の中にまとまっているようで、聴いている人を飽きさせない曲だった。

流れるようなアルベジオが空気を変えた。新譜『promise you』。振動が体に残るような重いベースの音と清らかなピアノの音のコントラストが特徴的だ。そして麗の歌い方もまた変化し、滑らかな声が耳を通り抜けた。最後の一曲は『She Side Blue』。麗は頭を左右に揺らして激情的に歌い、聴く側もエモーショナルな気分になる。多くの人が手を挙げて演奏に応えていた。チョーキューメイは繰り返されるキャッチーなメロディーとエスニックな雰囲気で会場を包み、聴く人に新鮮な音楽体験をもたらした。





ブランデー戦記


 彼女たちはステージ真ん中でグータッチをした。ギターボーカル、ベース、ドラムのシンプルな3ピース構成。初めの一曲『黒い帽子』でも、3人で鳴らすロックのシンプルさが最大限生かされた、ロックの原点のようなサウンドが響いた。マーシャルアンプの粗くて煌びやかな歪みに、ロック好きの心は大きく揺さぶられる。『Musica』では、みのり(Ba)のベースも無骨な歪みも露わになる。単調なベースラインが楽曲の気だるそうな雰囲気を端的に表現していた。蓮月(Vo/Gt)はギラついた眼差しとキレの良いギターソロで観客を魅了する。会場の奥の方まで手が上がり、全員がその音楽に夢中になっていた。

蓮月の声は低く太く響く。その声がギラギラとしたバンドサウンドに丸さと耳触りの良さを与える。『サプリ』では、繰り返されるリズムが体に染みついた。ギターのインパクトに初手から心奪われた『ストックホルムの箱』。少し高い歌声でのみのりのコーラスは、蓮月の歌声と非常に相性が良く、綺麗に重なった。アップテンポで疾走感のあるこの曲はブランデー戦記のライブの中の良いアクセントになっていた。

みのりは聴きに来た人々に何度も感謝を述べる。「最後の最後まで一緒に楽しんでくれますか。」という一言にフロアは大歓声で応えた。
クールなギターリフから『Kids』が始まった。ベースも同じリフをユニゾンで弾き、息の合った演奏がかっこよさを倍増させた。次の曲に入り、エモーショナルなコードが掻き鳴らされる。『coming-of-age story』では、ドラムに合わせて観客が手拍子を起こし、蓮月は声を枯らして歌い切った。スピード感に溢れたドラムから始まる、最後の一曲『僕のスウィーティー』を駆け抜ける。ブランデー戦記は30分のライブを丁寧に、クールに演じ切った。余計なパフォーマンスはない、洗練されたロックを見せてくれた。


Text by らいれいな
Photo by Ryohey Nakayama

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